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8月31日 PM11:14 ―6
「んっ…ぁあッ」
「アレ…たってるねえ。」
いたずらっぽい声。
見られているのを自覚したくないので、きつく目を閉じる。
「なんで勃ってるのかな?優海 まで…」
からかおうとするので、お返しに颯也 の付け根も探ってやる。
同じようにぎゅっと握ると、「うお」ふざけた声が混じったまま、颯也は俺のおかげで硬くなったそこから腰全体を震わせた。
文字通り、“水面下”での攻撃をお互いに繰り返す。俺たちが細かく動く度に、ちゃぷちゃぷと水面が跳ねた。
息が荒くなっている。颯也も、俺も。
「…俺が、欲しい?」
颯也の声が聞こえる。熱い息が耳元にかかる。
ああそうだよ!
「そうだよ…コレが…欲しいんだ…」
颯也の唇が俺のキスを求めてくるのがわかったが、俺はそれどころじゃない。
俺が欲しいのは、そんなんじゃない。
体だけじゃなくて、俺は、お前のすべてを…
「…よこせよ…全部…俺だけに…!」
目を開くと、颯也のきれいな顔が目の前にあった。
くるりとした黒目は、少しとろりとして、まっすぐに俺を見ている。形のいい薄い唇がかすかに動いたのがわかった。
「…たまんねえな…」
颯也のつぶやきが聞こえるのと同時に、俺の体は颯也から勢いをつけて突き放され、強く背中を押され、気づくと俺は、目の前にあるプールのふちを握らされていた。
「…ア…」
颯也の両膝に足を開かされると、プールの水に尻の隙間から下腹までを一気に舐め上げられる。
むき出しにされた後孔を硬くなった颯也の先端が数回探り、そして突然、颯也の雄自身は俺の中へと、小刻みに反復しながら孔の奥までを探るように強く潜り込んできた。
一気に、深く、熱くなった颯也自身で体内を貫かれる。
「ァアアアッ…!」
俺が飲み込もうとする間もなく、俺は颯也と突然に繋がった。
―― この感じ――!
ふちを握りしめ、俺は、いきなり始まった颯也からの行為に、喘ぎながらも必死で颯也の本気を求め始める。
「はッ、あ、あ…あ!!ッ…!」
ガツ、ガツと颯也に貪られる。
…いや、貪っているのは、俺だ。
後孔から颯也自身を飲み込み、その中にある濃厚な“証明”を搾り出すのに躍起になっている。
プールのふちを握りしめ、水の中で角度を探りながら、颯也をどんどん俺の中へ招き入れていく。
きつく締め上げ、こらえきれずに息を吐くときにだけ力を抜く。その瞬間、承知しているかのように颯也のそこがさらに俺の奥へとねじ込まれてくる。
「んくッ! あ、ああああん!」
中学生のときとは比べ物にならない。勢いを増した颯也のそこは、俺の最奥へ、最奥へと、荒々しく波打ちながら食い込んでくる。
「…ひ、あ、あ、あ、… … !」
「ア… …ゆ、…う…、すげ…イイ……!」
―― はッ、はッ、はッ …
そうだ。もっとだ。
もっと、感じてくれ!
俺だけを…
俺だけの…ものだって…
―― 言って…!
―― たのむから…!
「…優海ッ…俺い…イくかも……」
「ア…んっ…うん…!いいよ早く」
そのまま…中で…!
プールのふちにしがみついて激しく腰を揺さぶられながら、俺はただそれだけを求めている。
俺は、お前がうらやましかった。
お前が欲しかった。
お前を手元に置き、俺だけのものにしておきたくて、力づくで奪ってみたけど、結局は俺の手には負えないんだ。どんどん手の届かない存在になっていく。
…だけど、今だけは、繋がってるこの瞬間だけは、お前は俺だけのもの…。そうだろ…?
俺だけを見てくれているんだよな…?
…そうだろ…?
颯也… …!
「イくッ…イく…颯也…アっ…早く…」
「…ゆ、う…」
うなじに感じる颯也の吐息すら泣きたくなるほど愛おしい。
…欲しい…
欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい
… …欲しいよお……!!
「―― …そ…や、… …ア…ッ!」
かすれた声が喉の奥からひきつるようにずり上がってきて、俺の快楽を内側からさらに強く擦りあげた。
「ひ、ぐッ……!」
体じゅうに電流が走って、頭の芯がクラクラして、その瞬間、俺は、プールの中に射精していた。
同時に、震えまくる俺の最奥では、颯也の熱い快楽が、どくどくと、勢いよく広がっていくのを感じている。
―― !!
「ゆう…!」
ああ…!
最高だ。
最高の誕生日だ。
また颯也からの祝福がもらえている。
もっと気持ちよくなってもらいたい。
俺の虜になってしまえばいい。
俺だけのものにしたい。
こんな天才、どこを探したってありつけるわけない。
誰にも渡さない。
渡したくない。
まだ颯也は俺の中にいる。
今なら誓ってくれる気がする。
「な…そうや…」
これからも、…俺のことだけ…
「…は…」
颯也がゆっくりと後退していく。
「あ……だ、め…」
いやだ…!
もっと、いつまでも長く繋がっていたいのに…!
「アく…ッ」
なのに颯也は、吐精した途端役目を終えたかのように自身をずるずると動かし…ついに、俺の中から完全に抜け出てしまった。
瞬間、行為だけに集中していた全身の筋肉が一気に弛緩する。
水の下へと沈みこもうとする俺の体を、後ろから颯也が掻き抱くようにして現実へと引き戻す。
「…優海」
体がゆっくりと反転させられた。
抵抗できないまま、プールのふちに、今度は背中があたる格好になる。
「…なんで、泣いてんの…?」
「……ッ…」
うるさい。
どうせお前に、凡人の気持ちはわからない。
顔を見られたくなくて、最後の力を振り絞るようにして颯也の肩にしがみついた。
肌を強く押し付けると、俺たちの隙間を行き来するプールの水が、その部分だけ異様に冷たく感じられる。
「…っ、ふぅぅ…ッ…」
吐息が熱い。
体も、顔も、どこもかしこもだ。
…涙を止めようと必死になっているのに、どうしても、止まらないから。
結局、どんなに奥までつながったって、何度一緒にイったって、颯也とはひとつになれない。
そのことを、離れてしまった瞬間に、いやというほど自覚させられる。
…だから、離れたくなかったのに。
完全なる敗北者と成り果てた俺は、それでも颯也の鼓動を感じ取りたくてたまらないから、体を半分浮かす勢いで颯也にしがみついている。
「…俺が好き?」
颯也の声が振動となって胸を穿つ。
(……。)
「好き過ぎて、つらいんだろ。」
……なんだよ。天才。
「…言えって。優海。」
くそ…。
「…ッ…そうだ…。」
言わせんなよ鈍感野郎が…
天才なら天才らしく、察しろよ。
俺を、これ以上みじめな気持ちにさせないでくれ…
「…しゃ。」
颯也が小さくつぶやく。
「…俺の勝ち。」
……。
―― なんだと?
「…なにがだ…」
「優海を堕 とした。」
……え?
「ざまみろ優海…。俺をふったりするから。」
……。
……は?
…なんて、言った?今…
確認するために颯也の顔を見ようとして、だが、颯也の腕をふりほどけない。
「…ちょ…」
さらに強く絞め上げられる。…ぐえ
「…ちょっと…待て、お前、いまなんて…」
「この台詞 、ずーっと言ってやりたかった…!」
笑みのこもった声でそう言うと、颯也は俺を締め上げたまま水の中で何度か跳ねた。
勢いが強すぎて、跳ねた水が口の中に入りそうになる。颯也の硬い鎖骨に鼻や頬があたる。いででで
「ちょっと、待て…」
わけがわからなすぎて、とりあえず腕から逃れようともぞもぞ動いてみるものの、さっきの余韻に酔いしれてしまっている体がうまく力を入れてくれない。
颯也は相変わらず俺をおもちゃの人形でも扱うかのようぎゅうぎゅう絞めてくる。
ああ、もう、なんなんだ!?
ふった、って言ったのか!?
俺が!?お前を!?何のことだ!
「…ふったのは、そっちだろ、が、颯也っ!」
苦しくて細切れになりながらもようやく言葉を吐き出すと、颯也はようやく腕を緩めた。
「ふえ?」
間抜けな声を出す。
息を整えて、
「立派な大人になれ、って、俺を突き放したのは、お前の方だ…!」
あのときの喪失感を突きつける。
ついに颯也の腕が俺を解放する。
足がプールの底を捉えるのと同時に、俺と颯也の肌の間へ透明なプールの水が待ちかねたように流れ込んできて、その冷たさに一瞬身震いすると、颯也の手のひらが隙をついたかのようにバッと俺の両肩をつかまえてきた。
顔を上げると今度は颯也の透明な瞳が飛び込んできて、次に何かを言いかけていた俺は、その瞳に思わず口ごもってしまった。
真剣な、でもどこかあどけなさを残した颯也の瞳は、まっすぐに俺だけを見ていた。
-----------------------→つづく
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