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第32話 【カーマイン視点】オレのだから

「悪りいな皆、コイツも塔から帰ってきたばっかで疲れてるから、今日はこれくらいにしてやってくれ」 「皆、今日は祝ってくれてありがとう」 ライアが笑顔で皆に礼を言う。ライアを取り囲んでいたヤツらは、女も男も一瞬見惚れている。無理もない、随分と酒を呑まされて上気している頬、トロンとした目はなかなかに色っぽい。 立ち上がった途端にふらりとよろけた体をオレはしっかりと受け止めた。 「やっぱ限界だったか。じゃあ連れて帰るから道開けてくれ」 「ごめんな」 ライアが微笑めば、さあっと道ができる。ライアに肩を貸してギルドから出る前に、オレは振り返って宣言した。 「あと、コイツはオレのだから、手ぇ出さねぇでくれよ」 そのまま言い逃げたら、ギルドでは歓声だか怒号だか分からない声が一斉に上がっていた。よし、ちゃんと聞こえたらしい。 「……はは、嬉しい……ありがとう、カーマイン」 ライアが嬉しそうにふにゃりと笑う。 可愛いじゃねーか。宿についたらめちゃくちゃ可愛がってやる。そう決意してふらつくライアを支えながら宿へ帰った。 そのままライアをベッドへおろし、自分もベッドへ乗り上げる。 「服脱がすぞ」 「ん……」 ダメだ。もう目が完全にトロンとしてる。寝ちゃう前にちょっとでいいからこの体に触れて、存在を確かめたいのに。 力の入ってない手足をなんとか持ち上げて服を脱がしたら、真っ白でしなやかな裸体が現れる。何度も何度も想像しては妄想の中であれこれしてきた肢体が、現実の質感を持って目の前に横たわっているのは、なんというかちょっと感動だった。 暗い部屋の中、窓から差し込む月の光を受けた白い体が浮かび上がって、殊更に綺麗だ。 こういう意味でライアの肌に触れるのは初めてで、ちょっと緊張する。ゆっくりとその腹に手を這わすとライアの体がピクリと揺れて、眠りに落ちかけていた目が見開かれた。 「寝てていいから触らせて。ちょっとでいいからイチャイチャしたい」 正直に言ったら、ライアが恥ずかしそうに嬉しそうに微笑む。柔らかな緑色の瞳がこっちを見て、その瞬間フワッと俺たちの体が光に包まれた。 「なんか光った」 「浄化した。色んな人にベタベタ触られたから……今日はカーマインだけ感じたい」 「お前~~~っ」 たまらず、可愛い事を言う唇に飛びついた。 「ん……っ、ふ、んん、ぅ……っ」 ちゅうちゅうと音を立てるくらい吸って、唇の感触をふにふにと楽しんで、受け入れようと開く唇から口内へと侵入する。熱い舌を存分に縺れ合わせてから上顎を優しく舌先で撫でると、ライアの体が震えて、下腹を熱い塊が突いてくる。 気持ちよかったのか、と嬉しくなって唇を解放してやったら、ライアは蕩けた顔をして泣いていた。 「夢なのかな、これ……」 「なんでだよ、バカ」 不安そうな声を出すから、優しく頭を撫でてやる。銀糸のような髪はサラサラと手触りが良かった。 「だって、聖騎士になれて皆にあんなに祝福されて、カーマインにキスして貰えるなんて夢だとしか思えない。俺、本当は死にかけてて、幸せな夢を見てるんじゃ」 バカな事を言い出す唇を塞いでやった。唇を軽くはむはむと食んで、解放する。 「変な事考えてねぇで集中しろよ。現実だって分かるまで何度だって抱いてやるから」 「抱く? カーマインが、俺を?」 目を丸くされてむしろこっちが驚いた。まさかとは思うがコイツ……。 「つーかお前、まさかオレに突っ込むつもりだったのかよ」 「だってカーマインが俺に欲情するなんて絶対にないと思ってたから」 当然、って顔された。いやいやいやいや。 「お前がいない間、オレがどんだけお前で抜いたと思ってんだ。お前なんかオレの頭の中でガンガンに突っ込まれてアンアンよがってエロいことになってたっつうの」 オレのあけすけな言い方に、ライアの顔がさっと赤くなる。 「お前こそオレで勃つの? オレに触りたいって思うかぁ? 二年前ならともかく、結構オレ、ムキムキになってきたと思うんだけど」 「勃つに決まってるだろう。こっちは十二年も片思いしてるんだ。ずっと、触りたくて触りたくて仕方なかった。今だってこんなに綺麗じゃないか」 下から白い手が伸びてきて、オレの胸筋を愛しそうに撫でていく。 「やっぱり。弾力があってむちむちしてる。浅黒くてハリがあって……いつだって触りたいと思ってたよ」 言うだけあって触り方がエロい。 綺麗な顔が近づいてきて、オレの乳首をイヤらしく舐めてきた。 「……っ」 ライアはオレの体がピクッと反応したのを見て妖艶に微笑むと、今度は胸の近辺にある大小様々な傷に口付け始める。単純にくすぐったい。 「俺が知らない傷もいっぱい出来てるし、全部探して愛でたいよ。カーマインの二年間も全部知りたい」 そう言いつつも、ライアはオレの体から唇を離し、またゆっくりと枕に頭を戻した。月明かりの中でライアの顔が冴え冴えと浮かび上がる。こうして好きなだけライアの顔を見れるってやっぱりいいなぁと思ったら、ライアもオレを熱心に見上げてくる。 「俺だって触りたいよ。……でも」 ふ、とライアが幸せそうに笑った。 「カーマインとひとつになれるなら、もうどっちだっていい」 「オレも! でもやっぱ、めちゃくちゃ撫で回して可愛いがってアンアン言わしてぇ!」 思いっきり抱きしめて、めちゃくちゃにキスした。

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