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第34話 恋人のキスをしよう

「あっ……くっ……あ、当たり前だろ……っ」 「聖龍ってこの世のものとは思えねぇ美形だったって聞いたからさ、実はちょっと心配した」 バカな事を。聖龍様は確かに美しいお方だったが、あれはもう神の領域だ。俺が欲しいと思うのは子供の頃からいつだってカーマインただ一人だった。 「う……ああ、ん……絶対、ない……! 俺には……っ、カーマインが……一番、だから……」 「お前……っ」 俺の中のカーマインの分身が、さらに大きく、硬くなった。目を瞑りふるふると震えて何かに耐えているようだったカーマインは、波が去ったのか漸く目を開ける。 「カーマイン……?」 「……っ、ライア……っ」 俺と目が合った瞬間、タガが外れたかのように急にカーマインが激しく動き始めた。 「ごめん……っ、優しくしようって思ってたのに……っ、お前、可愛い過ぎて、止まんない……っ」 切れ切れにそんな事を言いながら、カーマインが俺の中を何度も何度も穿つ。その荒々しい腰の動きと息遣いに、俺はただ翻弄されるしかない。律動の強さに視界が上下に揺れる。圧迫も痛みも。カーマインと体を重ねている証のようで誇らしさすら感じていた。 「ああっ、ああっ、ああっ、ああっ、あ、ああ、ん、カーマイン、激し……ッ」 「ライア……っ、やっと、ホントのお前とひとつになれた……」 カーマインの声があまりにも切なくて、朦朧としながらも見上げたら、カーマインの目から雫が落ちてきた。大きな目から雫がボロボロと溢れ落ちてきて、俺は胸がいっぱいになってしまう。 カーマインがこんなにも俺を求めてくれるなんて想像したことすらなかった。 「お前ん中、柔らかくて、熱くて、うねってて、最高……! 想像より、万倍すげぇ……っ」 突き入れられるカーマインの分身が愛しくて愛しくて、思わずきゅうきゅうと中が締め付けてしまう。 「すげぇ気持ちいい……! ライア……ライア」 熱に浮かされたように俺の名を呼びながら、カーマインの逸物が俺の中を強引に掻き回す。それが熱くて気持ち良くて、刺激されるたびに身体が跳ねて上手く呼吸ができない。 「……ぅ、ん――っあぁ、ああ……っ! もっと、もっと突いてくれ……カーマインと、もっと、ひとつになりたい……っ」 「そんな不安そうな顔すんな……っ、一生一緒だって、言ってんだろ……っ」 互いの息遣いと、繋がった場所から聞こえる粘着質な水音。蕩けてしまいそうな快楽。それだけで充分に幸せなのに、もっともっと奥深く繋がりたくて、脚を絡み付け腰を押し付けながら何度もねだった。 「ああんっ、あ、すごい……っ、奥まで、カーマイン! あっあっ、あっ、奥、すごい、あ、」 「オレも、もうヤバ……っ」 「ひ、あ、あ、あ、ああーーーーっっっ」 熱い物が中に爆ぜるのを感じる。息すらできなくてクラクラとした思考の中、カーマインが俺の中で果てたのだと知った。同時に俺の陰茎からも白い飛沫が迸る。 一緒にイけたのが幸せで幸せで、俺の頬はまた涙で濡れていた。 力が抜けたようにカーマインの体が俺の上に落ちてきて、ぴったりと密着する。その重みと汗ばんでしっとりとした暖かさが愛しくて、俺はカーマインの背に手を回してぎゅっと抱きしめた。 こっちから抱きしめてもいい関係になったのだという事を、やっと実感として感じられた気がする。 これからは、俺から抱きついても、俺からキスしても、俺からこんな営みをねだってもいいんだろうか。そんな幸せな期待でカーマインの首筋に唇を這わせる。隆起した首の筋肉を唇でやわやわと食みちゅくちゅくと吸ったら、ほのかに汗を感じる。 カーマインの味を感じられる幸せに、舌が動くのを止められない。鎖骨を舐め、胸筋に舌を這わせようとしたところで、唐突にカーマインの上体がむくりと起き上がる。 ぴったりくっついていた体が離れて少し寂しい。 カーマインは俺の顔をジッと見て、熱い息を吐いた。 「やべぇ、全然おさまらねぇ。もっともっとライアが欲しい」 体の中でカーマインの怒張があっという間に昂っていく。このまま死んでしまいたいくらいに幸せだった。 *** 翌朝。 酷い気怠さと乾きを感じながら目を覚ました。身じろぐだけで身体中が痛い。股関節とあらぬところの痛みに呻いて、取り敢えず治癒の魔法を自分にかけた。 「目ぇ覚めたか?」 隣から声が聞こえて振り向けば、カーマインの顔が至近距離にあって驚く。そして、顔と一緒に目に入った浅黒い裸体には、いくつかのキスマークが浮かんでいる。昨夜夢中になって、俺がつけた所有痕。自分の独占欲を見せつけられたみたいで、急激に恥ずかしくなって俺は目を逸らした。 「……カーマイン」 「おはよ」 「うん……おはよう」 「なんだよ、恥ずかしがってないでこっち向けよ。つーか、顔見たい」 隣に寝転がっていたカーマインが、笑って俺を抱き寄せる。そして優しく俺の髪を撫でてくれた。その仕草があまりにも優しくて、また涙が出そうになった。 「夢じゃなかったんだな」 「当たり前だ。ゆうべお前にも、お前の体にもちゃんと約束しただろ、ずーーーーーっと、一生一緒だって。覚えてるか?」 カーマインが上からのしかかってきて、俺の唇に、頬に、瞼に口付ける。 「ま、いいさ。ライアが芯から信じられるようになるまで、何度だって言えばいいんだもんな」 そして今度は俺の口内に舌を差し込んでクチュクチュと音がするくらいに深く口付けてから、いやらしいキスを仕掛けてきたとは思えないくらい朗らかに、ニカッと笑う。 「恋人のキス。これからいっぱいしような!」 たまらなくなって、カーマインの首に腕を回し力づくで引き寄せて、その唇に噛みついた。 カーマインの唇を強引に割り開き、舌を差し入れてカーマインの舌に巻き付けたら、カーマインも負けじと俺の舌を求めてくる。二人で求め合うキスは濃厚で、いつまでもこうしていたいと口内を探り合った。 一度は諦めた恋が、こんな形で成就するなんて想像もしなかった。 何もかもを捨て、新たな自分になるために『聖騎士の塔』に挑戦したあの日。入る前、一人で塔を見上げていた時は、この塔が俺の墓標になってもいいとさえ思っていたのに。 愛しい恋人と幸せな時間を過ごす窓の外には、今日も『聖騎士の塔』があの日と変わらず聳えている。 カーマインと共に見上げる『聖騎士の塔』は、希望に溢れているような気がした。 【後書き】 これにて完結です!

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