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第35話 ★お礼SS【カーマイン視点】ライアがモテモテ過ぎる

ライアが戻った翌日は、お互いに離れ難くて一日中ベッドの中でイチャイチャしてた。 兄弟みたいに育って来て、いつも一緒で、ライアに甘い言葉を吐いてる自分なんて昔は想像出来なかったのに、ライアを待ってる二年の間に、すっかり平気になっていた。 というか多分、アイツで初めて抜いて以後、甘い言葉を吐きながらアイツを抱く想像をいつもしてたから、違和感なくなったんだろうなぁ。実際のアイツを前にしたら照れるのかとも思ったけど、オレの気持ちを一向に信じられてない感じのアイツを見てたら、言葉も体も全部駆使して説得しないとダメだって思った。 もう二度と、勝手に離れたりしないように、大事に大事にするんだ。 「カーマイン、今日はどうする?」 「うーん、一旦一緒にダンジョンにでも潜ってみるか」 「そうだな、久しぶりだからお互いの連携とかも確かめておいた方がいいかも知れない」 ライアの横で、まるいのがふよふよと主張してきて、ライアがそいつを撫でている。 「そうだな。キューも頼りにしてるよ」 嬉しそうにライアにすり、と擦り寄るソイツはなんと『聖騎士の塔』で聖龍から貰った使い魔らしい。ライアの命を救ってくれた命の恩人だときいた。オレも大切にしようと思っている。 ライアが聖騎士になった事で、オレ達が受けられるクエストの種類やランクは一気にあがった。『聖騎士』とは、それくらい上位の称号なんだ。 でも、オレもライアも意見は一致していて、急に上位のクエストを受ける気はなかった。 今までオレが受けていたクラスのクエストを複数受けて、それをこなす中で自分達の実践の中での適正ランクを見極めてからでないと簡単に命を落とす。 冒険者はそんな仕事だ。 互いに身支度を整えてみたけど、改めてライアを見たら、めちゃくちゃ輝いてた。 白銀の鎧に白銀のソードスピア。髪色まで銀だから、本当に絵に描いたような『聖騎士』だ。 「お前本当に聖騎士っぽいよなぁ」 「なにそれ」 「お前に比べると流石にオレの装備貧弱だな。剣買おうと思ってた金が浮いたから、軽くて動きやすい鎧でも買うかぁ」 「ああ、それがいい。ダンジョンも深層になると、一撃貰ったら命取りって場合もあるしな」 防具を買ってからダンジョンに潜ろう、と決めて二人揃って宿を出る。すると、いきなり話しかけられた。 「おーい、カーマイン!」 「あ、おっちゃん! この前はごめんなー!」 「その分じゃ仲良くやってるみてぇだな。良かった良かった」 「ああそうだ、イケメンの兄ちゃん」 「ライアな」 一応注意しとく。そろそろ覚えて欲しい。 「そうそうライア、聖龍様がな、落ち着いたら恋人を連れて遊びにおいで、って言ってたらしいぞ」 「えっ」 ライアと顔を見合わせたら、おっちゃん達に笑われてしまった。ちゃんと恋人に昇格できたんだと分かったんだろう。 「聖龍様はライアのこと気に入ってたからなぁ。ライア、お誘いを蹴ったんだろ?」 「私よりも優先したくなる男に興味がある、ってさ」 ガハハハハ、と豪快に笑うおっちゃん達を横目に、オレはライアをジロリと睨みあげる。 「やっぱりコナかけられてんじゃねーか」 「誤解だ。この塔で働かないか? って誘われただけだよ。カーマインが待ってると思ったから、ちゃんと断ったんだ」 危ねぇ! 手紙書いといてよかった! 「ま、良かったらそのうち遊びに行ってやってくれ。聖龍様も退屈なんだろ」 「地上に飽きたらいつでも雇うっても言ってたから、就職してくれてもいいけどな!」 「なんだよ、それ。やっと塔から出てきたのに……」 ついちっちゃな声が出てしまった。おっちゃん達は耳ざとくその声を捉えたらしく、わしゃわしゃと頭を乱暴に撫でられる。 「聖龍様も今すぐ来いなんて野暮なこたぁ言わねぇよ」 「そうそう。長ーい時を生きておいでの方だからなぁ。思い出した頃に顔出せばいい」 「分かりました。必ず顔を見せますと伝えてください」 ライアがソツなく答えてくれて、俺たちは門番のおっちゃん達に手を振って塔をあとにする。ところがどっこい、そこからが大変だった。 ライアが聖騎士になったという話は街中に広く流布されてるらしく、ギルドへと続く道すがら、ただ歩いているだけで注目を集めまくりだ。ライアの『見るからに聖騎士』な姿形も相まって、街中の女の子達がキャーキャー言ってる。 声をかけてくる猛者もいるけれど、それはライアが笑顔で躱していた。 コイツ、すごいな。 なんとかギルドに辿り着きはしたものの、そこからがまた大変だ。 ライアはすぐに囲まれてS級も含む色々なパーティーから誘われまくってて大騒ぎになっちまうし、業を煮やしたギルドマスターに別室に隔離されて近々王宮に聖騎士になった旨の顔見せに行かなきゃいけないとか言われちゃうし。 オレとライアは「なんかすごい事になっちゃったな」と顔を見合わせることしか出来なかった。 そのまま別室で手頃なクエストを受けさせて貰って裏口から外に出たオレらは、なんだかおかしくなってひとしきり笑いあう。二年前は、こんな未来なんて考えた事もなかったよな。

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