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第37話 ★お礼SS【カーマイン視点】オレのだ、バーカ!

ライアの見立てで鎧と盾も新調したら、市場を抜けてダンジョンへと続く街の門へと抜ける。市場を抜けるのは本当に大変だった。人が沢山居るだけに、ひとりがライアに気づいて「聖騎士だ!」って騒ぎ出すと我も我もと寄ってくる。口々にあれこれ煩く誘ってくるのを躱すだけで一苦労だ。 面倒くさくなって、オレはライアの手を掴んでダッシュでその場を去った。激しいブーイングが聞こえるが気にもならない。 世の中の全ての人に言ってやりたいくらいだ。お前達がどんだけ誘って来ようがライアの心は揺らがないんだ。要するに。 ライアはオレのなんだよ、バーカ!!! *** 「へぇ、深層に『転移ポイント』があるなんて初耳だったな。これなら探索が便利だ」 ダンジョンに入るなり、ライアが初っ端から驚いてくれてテンションがあがる。 今日は前回の続き、ダンジョン深層の11層にライアと二人で来てみた。二人だし、今日は簡単に12層への階段が見つかるかも知れない。 「うん。口外しない事になってるんだってさ。そういうのが広まると、無理して深層に挑んで死ぬヤツが出るかららしい。そういやこの『転移ポイント』って仕組みにも聖龍様が関わってるらしいぜ。龍ってのはワケがわかんないよな」 「ああ、なるほど。確かに『聖騎士の塔』でも似たようなトラップがいっぱいあった」 「トラップかよ」 なかなかタチが悪い。 「それにしても深層にまでチャレンジしてるなんて、カーマイン凄いな。しかもソロでだろう?」 「お前程じゃねぇよ」 「俺にはキューもいたから。実際それでも死にかけてるしな。……カーマインも、何度も危険な目にあったんだろう?」 ライアは俺の傷を心配そうに撫でる。もう痛くもないが、確かにヤバいと思った事はいくらでもある。 「まぁな、それはお互い様だ。でもやっぱ、こうやって話しながら進んで行けるのって単純に楽しいな」 「確かに。俺、カーマインの背中見ながら歩くの好きなんだ。安心する」 「そっか、なんか嬉しいな」 ダンジョンでは特に、リスク分散のために剣士で盾でもあるオレがいつも少し先を歩いていた。ライアが少しでも頼もしく思ってくれてたんなら嬉しい。 「今だから言えるけど、装備が薄い頃は特に、カーマインの背中の筋肉の動きが綺麗だとか、うなじが色っぽいとかちょっと邪な目で見てることも多かったけど」 「突然のエロい発言」 「今も浅黒いうなじが色っぽいよ」 それは喜んでいいのかどうか……と思ったところで、前方から微かな物音が聞こえてきた。 「多分魔物だ」 短く言うと、ライアも無言で頷きソードスピアを構える。 ブラッドオーガだ。 角から魔物が姿を現した瞬間を狙って、オレがやや斜め前に走って魔物のサイドから斬りつける。寸の間遅く、ライアの槍が魔物の体を貫いた。 ああ、この感じだ。 なにも変わっちゃいない。 何も言わずとも、互いに知り尽くした戦い方だ。この階層の高レベルな魔物でも、二人なら怖くないと実感できる。後ろにライアがいてくれる安心感を、オレはまざまざと感じていた。 「カーマイン、随分速く、強くなってる」 「お前に水を開けられたくなくて、結構頑張ったからな。しっかしこの剣、切れ味すげぇな。ブラッドオーガにあんなにすんなり剣が入ったの初めてかも」 「ああ、それは俺も最初は驚いた。やっぱりあの『聖騎士の塔』で入手できる装備は、地上のものより性能が頭ひとつ抜けてる感じがする」 「だよなぁ。まぁ転移ポイント作っちまうような人外が持ってる剣だもんな。当たり前か」 そんな話をしながらも二人でどんどん奥へと進んでいく。いつもよりもずっとずっとペースが早い。一回一回の戦闘が簡単に終わるから、体力の消耗も少なければ時間のロスもない。 これまでは昼飯をゆっくり取る時間も惜しくて干し肉を噛みながら歩いていたのに、ライアと床に腰をおろしてしっかりした食事を取るゆとりさえあった。12層への階段はあっという間に見つかって、オレたちは引き返すか先に進んで12層の転移ポイントを探すかの選択を迫られる。 「でも11層の転移ポイントまで戻るのも結構な距離あるよな。それだったら12層で新たな転移ポイントを探した方がいいんじゃないのか?」 ライアの言葉にオレも頷いた。 「オレもそう思う。層が変わると魔物の強さが一気に変わるから、いつもはもうちょっと迷うんだけど、今日はライアも一緒だし、先に進んでいいと思う。転移ポイントは比較的階段の近くにある事が多いんだ」 「それなら、そうしよう」 あっさりと合意し、12層へと降りていく。 さすがにちょっと傷を負う事も出てきたけれど、ここにきてライアの使い魔、キューの威力を思い知る事になった。ライアが少しでもケガをしようものなら、秒で回復してくれる。魔力がふんだんにあるらしく、一切出し惜しみしない姿勢がすごい。 「確かにこの勢いで回復してくれるとだいぶ助かるな」 「だろう? 最初は指示しないと回復してくれなかったけど、今じゃ声を出す隙もない」

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