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ルーの家(1)
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やっと人心地をついたと思ったとき、僕はなぜか、知らない家の中で、知らない丸太の椅子に腰を掛け、見たこともないテーブルの上で、豆のスープが美味しそうな匂いを立てているのを、ただぼんやりと眺めていた。
肩には温かな毛布も掛けられていた。
「こんなものしかないけど、良かったら食べて?」
ルーの声と共に、パンも添えられる。
「……ありが、……いや、」
いや、ここはたぶんルーの家で、ということは、妹のラウラもじきに帰ってくるわけで。
鉢合わせしたら、こんな恥ずかしいことってないんじゃないか?……
身を潜めて辺りを見回していると、ルーがくすっと笑った。
「心配ご無用。ラウラは今は一緒に暮らしていないんだ。この家には僕だけだから」
「ど、どうして」
あんなに仲の良い兄妹だったのに。
「訳は後で話すよ。とりあえず飯にしよう。お腹、すいたろ?」
「でも……」
返事の代わりに、腹の虫がグーと鳴った。
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