5 / 20

ルーの家(1)

** やっと人心地をついたと思ったとき、僕はなぜか、知らない家の中で、知らない丸太の椅子に腰を掛け、見たこともないテーブルの上で、豆のスープが美味しそうな匂いを立てているのを、ただぼんやりと眺めていた。 肩には温かな毛布も掛けられていた。 「こんなものしかないけど、良かったら食べて?」 ルーの声と共に、パンも添えられる。 「……ありが、……いや、」 いや、ここはたぶんルーの家で、ということは、妹のラウラもじきに帰ってくるわけで。 鉢合わせしたら、こんな恥ずかしいことってないんじゃないか?…… 身を潜めて辺りを見回していると、ルーがくすっと笑った。 「心配ご無用。ラウラは今は一緒に暮らしていないんだ。この家には僕だけだから」 「ど、どうして」 あんなに仲の良い兄妹だったのに。 「訳は後で話すよ。とりあえず飯にしよう。お腹、すいたろ?」 「でも……」 返事の代わりに、腹の虫がグーと鳴った。

ともだちにシェアしよう!