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これは僕だけの罪だ、と君は言った ※

「ノア……」 やっと唇を離され、ふらふらと見上げる。 熱を帯びたルーの目の中に、だらしない僕の顔が映っていた。 なんでこんなことができるの…… ねぇ、ほんとに同い年……? 「泣いてるの? かわいいな」 赤い舌が僕の目尻を這って、頬をつたい、耳にも触れた。 「ノア。君は今、君が思うほど良い状態じゃない」 「ひっ……、」 吐息が内耳を震わせる。全身に甘い痺れが走った。 「仕事で疲れ切っているのに、眠れてないんだろう?」 「な、……」 なんでそんなこと、知ってるの。 確かに僕は、お屋敷の下働きでヘトヘトになるまで働いて、僅かな賃金を得ている。 なのに安息日の夜すらまともに眠れない。 眠ろうと思えば思うほど、嫌なことばかりがぐるぐると頭の中を駆け巡って朝を迎える。 なぜルーは分かるんだろう。 ラウラから聞いた? でもそんな話、ラウラにしたかな。 わからない、頭がぼうっとして。 「君に今、なにが必要かわかる?」 耳のふちを舐めながら、ルーが言う。 「ぅ、ぁ……」 「休息だよ、深い眠り」 「ねむ……り……」 「そう。……いい? これから僕がすることには、特別な意味はない。君は何も負わないし、神にも背かない」 「ルー……?」 「だから安心して、僕に任せて。大丈夫――これは君の意志じゃない。僕だけの意志、僕だけの罪だ」 「なに、……を、……」 じらすように這い回っていた舌が、唐突に耳の奥を突いた。ぞくりと背中がのけ反って、喉が悲鳴をあげた。 「あは、かわいい」 痺れる耳に囁かれ、全身が溶けていく。 やめて欲しいのに、やめて欲しくない、ルーの言葉と仕草に、心がばらばらにされる――。 「かわいいノア。君はチョコレートがあれば死んでもいいと言ったね。なら死ねよ。僕が殺してあげるから」 ルーはチョコレートのかけらを口にほうり込むと、また僕の唇を塞いだ。 「っ、くっ……」 深い甘みが鼻腔をついて、長い舌が、僕には一生できそうもない動きで口の中を這い回る。 「る、……待っ……」 いつのまにかシャツのボタンは解かれていて、胸元を何度もキスが襲った。 僕はその度に嬌声をあげた。 やがて長い指が、むき出しにされた僕のそれに触れたとき――僕は僕の意志の全てを手放した。 ただその瞬間だけは、全身を火花が貫いたような衝撃に襲われ――服の上からじゃわからなかった、僕よりずっと強い体躯が、僕を飲み込むようにのしかかり―― 両腕で腰を抱え込まれたとき、僕は完全に逃げ道を失った。 あとはただルーのなすがまま――ベッドの軋む音に合わせて、体をのけ反らせ、悲鳴をあげ――真っ白に溶け込んでいった。

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