14 / 23
服薬
「整腸剤飲んでた方がいいでしょ?お腹緩くやってたからね?」
「いや、もう痛くないし」
「整腸剤は腸内環境を整える薬だから」
「いらない」
「いらないって笑、飲んどこうよ、ね?」
俺がまだ飲むって言ってないのに、兄貴は薬の用意をして、俺に薬と飲み物を渡してきた。
こうなれば、もう飲む以外の選択肢がない。
しかも、整腸剤ではないが、俺は薬を飲まなかった前科があるので、兄貴が飲み終わるまでちゃんと見届ける。
「はい、どうぞ!」
「....」
俺は薬と睨めっこしてるだけだった。
兄貴は俺のペースがあるからといつも待ってくれる。
それでもあまりにも遅すぎるし、ずっと睨めっこしてるだけなので、いつも兄貴が飲ませてくる。
「あやー?飲まないのー?」
「....」
「自分で飲めないなら、お兄ちゃんが飲ませるけどいい?」
「....マッテ」
「わかった。あと10分ね?」
兄貴は待ってって言ったら10分延長してくれた。
急いでる時とかは5分とかになるけど、基本的に待ってって言ったら待ってくれる。
けれど、それも1回だけ。
10分経つと兄貴がまた聞いてくる。
「菖綺、10分経ったよ?」
「....」
「お兄ちゃんが飲ませるね?」
「....イヤ」
2回目は待ってくれないってわかってるし、嫌だと言っても飲まなくていいとはならないってわかってるけど、抵抗はする。
兄貴は優しいけど、薬とか治療の時は医者の顔して怖い。
無理やりにでもしてくる人だから。
俺のためだとわかってるけど、嫌なものは嫌なので、その時の兄貴は嫌い。
向かい側にいた兄貴が俺の方に来て、飲みものを俺に渡して、「口にふくんで?」って言われるけど、なかなか口にふくめない。
できないってわかってるけど、兄貴は絶対に俺に聞いてくれるし、俺にさせようとしてくれる。
自分でした方が自分のペースでできて、良いから。
それでも俺はできないから、兄貴がする。
兄貴は俺が持ってた飲みものを取って、俺の顔を上にむかせて、飲み物を口に入れて、素早く薬も入れて、口を閉めて、「ごっくんして?」って俺に言う。
兄貴は俺の目を見て言うから、その圧に負けてごっくんってしてしまう。
ごっくんしたら、ニコッてして「偉い!頑張ったね!」って言ってくれる。
この歳にもなってって思いけど、嬉しい。
少々半泣きになりながら、無事薬を飲み終えた。
薬を飲み終えたのでお風呂に入って、すぐ寝に入りたかったが、残ってた経口補水液を飲み終わるまで寝ちゃダメって言われたので、眠たかったのもあって、ヤケクソに一気に飲んだ。
やっぱり不味かった。
腹痛と戦っていたからか、なんかすごく疲れててベッドに入って、すぐ寝てしまった。
今日も一日疲れた....
でも兄貴がいてくれて良かった。
1人だったら、どうなってたんだろう....
....考えないでおこう
ともだちにシェアしよう!

