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風邪治ったのに....

先日まで、風邪をひいて、ようやく治り学校に行けるようになった。 なのに、なんか最近耳に違和感がある気がする.... ただの気のせいだと、気にしないようにした。 でも日に日にズキズキと痛むようになった。 無意識に耳を触っていたらしく、兄貴に聞かれた。 「菖綺(あやき)、耳どうかした?」 「え?なんで?」 「最近よく触ってない?」 「そう?別になんもないけど」 「ふーん、ならいいんだけど」 バレたか?不審がられたかな? 兄貴にバレたら絶対病院に連れていかれるから嫌だ。 兄貴は医者だから、なかなかに忙しい。 俺が風邪をひいた時に、どうにか休んで看病してくれた。 だから、仕事が溜まってしまったらしく、最近は特に忙しそうにしている。 どんなに忙しくても、俺が家にいるから兄貴は少しでも時間あれば絶対帰ってきて、少ししたらすぐに出ていく。 家に帰るぐらいなら少しでも休めばいいのに。 兄貴は俺のために時間を使ってくれる。 でも俺はそれが嫌だった。 俺のためにやってくれるのが嫌で、俺に使う時間があるなら自分ためにその時間を使って欲しい。 こんな俺なんかに時間を使ったって無駄なだけなのに.... 忙しい兄貴が俺の顔を見る為だけに帰ってくるものの、すぐまた仕事に戻るので、俺はひとりの時間が必然的に増えた。 ひとりの時間が増えてると、色々と考えることが多くなった。 今までひとりで暮らしてきたはずなのに、兄貴の家に来てから、兄が割と一緒に居てくれた。 考える時間が増えると、良くないことも考えてしまう。 兄貴にとって自分はお荷物なんじゃないかとか、兄貴が休めないのも俺のせいなんだとか、悪い方向にばかり考えてしまう。 考えてる間も耳はズキズキと痛みを主張する。 たまに痛すぎて涙が出そうになることもあった。 それでも何とか耐えて、兄貴にはバレないようにした。 幸い、兄貴は忙しく、気づくことはなかった。兄貴にバレたら病院に連れていかれるのが嫌って言うのもあるが、これ以上兄貴に迷惑をかけるわけには行かなかった。 兄貴に嫌われたら本当に俺は....ひとりぼっちになってしまう....。 ひとりは慣れてるはずなのに、兄貴に嫌われることがこんなにも怖いものなのだと、思った。 学校を休めば兄貴は心配する。 だから学校には普通に通った。 耳はズキズキ痛むものの、耐えていれば大丈夫だったから。 でも最近は、授業中の先生の声が聴きにくかったり、誰かに話しかけられてもすぐに反応できなかったり、話してることが聴き取りにくかったり、日常生活に少しずつ支障をきたして言った。 すぐに反応できない俺を不審に思ったのか、樹季(たつき)稜生(いつき)に相談してたらしい。 稜生は俺が自分で来るのを待っていたらしいが、俺が行く訳もなく、稜生から呼び出しをくらった。 「菖綺、最近なんか困ったことないか?」 「別にない」 「そうか。」 俺は質問の意図がなかなか分からなかった。 なんで呼び出されたのかもわかってなかった。 耳のことバレたとか、そんなこと思わなくて、樹季も普通に話しかけてくるし普通に話すからバレてないと思ってたし、稜生とはあんまり会ってないからばれてるバレてるはずないと思ってたから。 俺の回答に稜生は少し考えて、俺に言った。 「菖綺が自分から言うわけないか....」 「ん?なにが?」 「単刀直入に聞くけど、耳はいつから聞こえずらい?」 「え?」 「耳、聞こえずらいだろ?」

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