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バレた

俺はバレてるはずがないと思っていたので、最初稜生(いつき)がなんの話しをしているのか理解するのに少し時間がかかった。 稜生は俺に分かりやすいようにゆっくりはっきりと話してくれていたらしい。 「別に、そんなこと」 「ふーん、そうか」 俺の性格上否定されることは稜生もわかっていて、その否定をあっさり受け取ってくれたから、なんか変な感じがしつつも、良かったと思った。 だが、否定したことによって、稜生の話し方が変わり、稜生の話してることが聴こえずらくなった。 必死に聴き取ろうとしても、途切れ途切れで、やっぱりなんて言っているのか分からなかった。 「・・・・どうする?」 「えっと....」 かろうじて最後は聞き取れて、なにか俺に質問をしていたらしいけど、問いの内容が分からなくて、返答を返せなかった。 そんな俺を見て、稜生はもう一度あの質問を今度は俺が聞き取れるように言った。 「菖綺(あやき)、やっぱり耳聞こえずらいんだろ?」 「....」 「どうなの?本当のこと教えて」 「....ウン」 もう隠せないと思って、稜生の問いに正直に答えた。 そしたら、稜生は「わかった」と言って、頭をポンポンとして、何かを取りに行った。 すぐに戻ってきた稜生の手には体温計と何かを持っていた。 俺はその何かがなんなのか分からなくて、目で追ってどこに使うのか痛いのかとかいろいろと考えていた。 「あや、菖綺!」 「!」 「大丈夫か?」 「ぅん」 「はい、体温測って」 「わかった」 夢中に見すぎて、稜生から呼ばれてることに気づかなかった。 稜生から渡された体温計を脇に挟み、また何かをじっと見ていた。 そんなことをしていたら、体温計が鳴って、稜生にすぐ体温計を取られて、俺は見る暇もなかった。 「うーん、やっぱり」 「え?なに?」 「菖綺、熱あるな」 「え?」 熱あるなんてそんなこと思っていなかったので、稜生の言ったことに驚いた。 俺、熱あったのか....?! 耳の方が気になりすぎて、気づいていなかったらしい。 熱があると稜生に言われ、その後稜生が「前から発熱してたと思うけど」と言われ、さらに驚いた。 俺が驚いた顔をしていたから、稜生に気づいてなかったのか笑と言われた。 全く気づかなかった。 熱が出たらキツイものだから、気づくだろうと思うけど.... 病み上がりの時とかは何日か朝起きてから体温計で測ることはよくあった。 俺は別になんともないし治ったから測る必要はないと思っているが、兄貴が微熱があったりしたらダメだからと病み上がりの時は体温を測る。 だが、測る習慣がある訳ではないし、兄貴に言われなければ自分から体温を測ることはしないので、兄貴が忙しい今は体温計を見ることもなかった。 それに熱っぽくても体温を測って、熱があった時よりキツくなるので自分からは測ろうと思わない。 体温を測り終え、稜生が紙に記入したあと、次は俺が気になってた何かを手にした稜生が迫ってきた。 その何かに身体が強ばってしまった。 「菖綺、横向いて」 「....」 「菖綺?....あー、これか」 身体が強ばって横を向けない俺の視線の先をおって、稜生が手にしていた何かを見ていることに気づき、何も言わなくても俺がなにが言いたいのか気づいてくれた。 「これは耳鏡って言って、耳の中見る時に使う器具ね。別に痛くは無いから大丈夫」 「....ほんとか?」 「本当本当、1回試してみたらわかるから。はい、横むいて」 椅子は回転するので稜生に横に向かされて、稜生の方に耳を向けるように動かされた。 ずっと強ばってる俺を少しでも驚かせないように稜生は「今から耳の中見るぞ」と一言いって、耳鏡という器具を耳の中に入れた。 冷たさにびくっとしたものの、痛みを感じことは無かった。 だけど、元々耳がズキズキしてるのもあって、気持ち悪くて早く抜いて欲しかった。 「はい、次反対」 そう言ってまた椅子を回転させて、次は反対の耳を耳鏡で見られた。 ようやく両耳見終わって、稜生の方に椅子を回転させた。 「はい、終わり」 「うぅ、気持ち悪い」 「痛くはなかっただろ?」 「痛くはねぇーけど」 「菖綺、早退して今から病院行くぞ」 「え?」 やっと終わったと思ったのに、稜生から病院行くぞと言われた。 しかも今から行くって....

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