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連行
「え、でも、稜生 仕事....」
「大丈夫だ。それより菖綺 を今すぐ病院に連れていく方が大事だ」
俺は全然大丈夫じゃない。
今からって心の準備できてないし、てかできないし。
無理無理、病院なんて行きたくない。
兄貴もいるし、バレたくない。
稜生にバレてる時点で兄貴にバレるのはわかっているし、兄貴にバレれば病院に行くことも決定事項だが、今から病院行くのは絶対に無理。
「早く帰る準備して行くぞ」
「....え、やだ」
「やだじゃない。準備しないならこのまま行くか、後で取りに来るか樹季 に取ってきてもらうか、」
自分で帰る準備しに行く方が少しは病院に行くまで時間伸ばせるかも、もしかしたら逃げれるかも、そう思って帰る準備をしに行こうとしたが、稜生に手を掴まれた。
「樹季に持ってきてもらおう。よし、今から行くぞ」
「え、いや、自分で帰る準備するから」
「樹季に頼むから大丈夫だ」
いやいやいや、俺が大丈夫じゃないからッ!
それに後で取りに来るって言う選択肢がいつの間にか消えてるし、
それって、つまり長くかかるってこと?!
絶対やだ!絶対痛いことされるじゃん!!
そんな俺のことをお構い無しに、稜生は俺を手を掴んで下駄箱で俺の靴を取って、職員の出入口から出て、車に乗せられた。
あまりにも急な出来事すぎて、思考停止していたが、車に乗って病院に近づくに連れて、これから何がされるのかとか不安と恐怖が押し寄せてきて、目に涙が溜まり、次第にはこぼれ落ちていた。
それに気づいた稜生が俺の頭をポンポンと撫で、「大丈夫大丈夫」と優しい声色で言った。
病院に着くと、稜生は誰かに連絡してた。
そして窓をコンコンとされて、窓の方を見るといつの間にか兄貴がいた。
兄貴が俺が座ってる助っ席のドアを開けた。
不安と恐怖で固まってしまった俺のシートベルトを兄貴が外してくれて、未だに止まらない涙を「大丈夫だよ」と声をかけながら拭ってくれた。兄貴のいつもと変わらない優しい笑顔に少し安心して余計に涙が止まらなかった。
兄貴は少しの時間だけどほぼ毎日家に帰ってきてくれていたはずなのに、なんだが久しぶりに兄貴に会った気分だった。
兄貴が助っ席から俺をおろしてくれて、稜生も車を降りてた。
足取りが重くて、なかなか進めない俺を兄貴が抱っこして病院の中まで連れていった。
正面から入ると目立つので、裏口から入れてもらった。
兄貴の肩に顔を伏せて、恐怖と不安の涙で兄貴の肩を濡らしてしまったが、それについて兄貴が怒ることは全くなかった。
抱っこされ、俺が少しでも落ち着くように背中をトントンとリズムよく叩きながら「大丈夫大丈夫」と兄貴は言った。
それでも俺の不安と恐怖が完全に消えることはなかった。
俺は兄貴にしがみつき、涙を流すことしか今は出来なかった。
「おぉ、来たか」
「ごめんね、急に頼んじゃって」
「時間空いてたし大丈夫だ、それより久しぶりだな、稜生」
「久しぶり、りさ」
「菖綺もこの前ぶりだな」
「....グズッ」
なんで、 琳皐 がいるんだよ....!
てか、ここいつもと違うとこ....
兄貴の肩に突っ伏してたから、全然気づかなかった。
「アニキ....」
「ん?どうしたの?」
「ココ、ドコ....?」
「耳鼻咽喉科、耳鼻科だね(あらら、お目目が赤くなってるし、まだ涙目だね、可愛いけど)」
じび、いんこうか....?
じびか....耳のとこ?
でもなんで琳皐が??
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