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薬の飲ませ方

「10分経ったよ、嫌だろうけど頑張って飲もうね?」 そう言って、俺をイスごと自分の方に向かせ、俺がずっとにらめっこしてた薬を取って、俺のあごをクイって少し上に向かせ、兄貴と目を合わせられた。 「口開けて?」 と言われるが、もちろん口を開けれるわけなく、水と錠剤を兄貴が自分の口に含み、俺の口に流し込み、強制的に飲まされた。 これを他人にいうと、ドン引きされる。主に兄貴が。 稜生(いつき)にさえ、ドン引きされてた。 俺は兄弟ならこの飲ませ方は当たり前だと思ってた。けど、どうやら違うらしい。 それでも兄貴はこの飲ませ方を辞めない。 これが一番安全に飲まさられるからって言ってた。 錠剤が喉に詰まったら、余計に飲めなくなるでしょ?って言われて、確かにそうだと思った。 (あやくん単純で純粋です) 「よし、飲めたね!えらいえらい!!」 「ムゥ....」 兄貴に褒められて、頭撫でられて、恥ずかしかったのと、無理やり薬飲まされてムッとした。 「お風呂入ろうか?あれ、怒ってるの?」 「怒ってる」 「ごめんね?(ムッとしてるのもかわいい♡)」 「フンッ、お風呂入ってくる」 そう言って、お風呂場に行った。 だが、何故か兄貴が着いてきた。 「なに?まだなんかあんの?」 「お風呂入るんでしょ?」 「?そうだけど」 「お風呂入ろう」 「は?どういうこと?」 「だからね、あやがお風呂入りたいって言ったから入ろうと思って」 「え?入るって誰が?」 「菖綺(あやき)と俺」 「なんで?」 「耳に水が入らないように」 「その為だけに兄貴も入んの?」 「そうだよ?」 兄貴が何言ってるのか理解するのに時間がかかった。 要するに兄貴は、俺が中耳炎になったから耳に水が入ったら行けなくて、まだ熱もある俺を一人でお風呂に入らせたくないらしい。 この歳になって、兄貴と入りたくないって普通だろ? 兄弟だから良くない?って思うかもしれないけど、いっとき会ってなかった兄貴だぞ? それに割と歳も離れてるし、。 嫌なんだけど。 兄貴に座薬入れられたりとか、診察されたりとか、まぁ見られてはいるけど、小さい頃に一緒にお風呂入ったこともあるけど、でも嫌なもんは嫌だ! 「絶対にやだ!」 「なんで?一緒にお風呂入ったことあるでしょ?」 「それは昔の話だろッ!」 「なんで嫌なの?俺はあやくんの全て好きだよ?」 「その呼び方やめろって!嫌なもんは嫌なんだよ」 「ごめん。でも菖綺は耳気をつけてって言っても気をつけないでしょ?」 「気をつけるから、入ってくんな」 「熱もあるのに?」 「知らねぇーよ!体温計が壊れてただけだろ?」 「俺は心配だから言ってるんだけど?」 「心配してくれなんて俺は頼んでないッ!ほっといてくれよ!」 「....」 「兄貴のそう言うお節介なとこが嫌いなんだよッ」 俺はなんでこんなにも怒ってしまったのだろうか。 兄貴が俺のことを心配してくれるのはありがたく思うべきだろ。 それでも兄貴に迷惑かけたくないと思ってた。 兄貴が俺じゃなく、自分を優先にして欲しいと。 兄貴のことが嫌いなんて、思ってないのに。 無理やり薬飲ませてきたりする医者の兄貴は嫌いだけど、それは俺のためだってわかってたから。 兄貴のことは大好きだ。 口には出して言えないけど、兄貴を大好きなのは本当だ。 でも自分が思ってることとは逆の言葉が口からこぼれる。 そんな自分が嫌だと何度も思ったのに、また言ってしまった。 兄貴を傷つける言葉とわかっていながら。 兄貴を傷つけてしまった。 気づいた時にはいつも、もう遅いんだ....。 兄貴が無言になって、やってしまったことに気づいた。 「菖綺、そろそろ黙らないと本気で怒るよ?」 「!?」

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