22 / 23
薬の飲ませ方
「10分経ったよ、嫌だろうけど頑張って飲もうね?」
そう言って、俺をイスごと自分の方に向かせ、俺がずっとにらめっこしてた薬を取って、俺のあごをクイって少し上に向かせ、兄貴と目を合わせられた。
「口開けて?」
と言われるが、もちろん口を開けれるわけなく、水と錠剤を兄貴が自分の口に含み、俺の口に流し込み、強制的に飲まされた。
これを他人にいうと、ドン引きされる。主に兄貴が。
稜生 にさえ、ドン引きされてた。
俺は兄弟ならこの飲ませ方は当たり前だと思ってた。けど、どうやら違うらしい。
それでも兄貴はこの飲ませ方を辞めない。
これが一番安全に飲まさられるからって言ってた。
錠剤が喉に詰まったら、余計に飲めなくなるでしょ?って言われて、確かにそうだと思った。
(あやくん単純で純粋です)
「よし、飲めたね!えらいえらい!!」
「ムゥ....」
兄貴に褒められて、頭撫でられて、恥ずかしかったのと、無理やり薬飲まされてムッとした。
「お風呂入ろうか?あれ、怒ってるの?」
「怒ってる」
「ごめんね?(ムッとしてるのもかわいい♡)」
「フンッ、お風呂入ってくる」
そう言って、お風呂場に行った。
だが、何故か兄貴が着いてきた。
「なに?まだなんかあんの?」
「お風呂入るんでしょ?」
「?そうだけど」
「お風呂入ろう」
「は?どういうこと?」
「だからね、あやがお風呂入りたいって言ったから入ろうと思って」
「え?入るって誰が?」
「菖綺 と俺」
「なんで?」
「耳に水が入らないように」
「その為だけに兄貴も入んの?」
「そうだよ?」
兄貴が何言ってるのか理解するのに時間がかかった。
要するに兄貴は、俺が中耳炎になったから耳に水が入ったら行けなくて、まだ熱もある俺を一人でお風呂に入らせたくないらしい。
この歳になって、兄貴と入りたくないって普通だろ?
兄弟だから良くない?って思うかもしれないけど、いっとき会ってなかった兄貴だぞ?
それに割と歳も離れてるし、。
嫌なんだけど。
兄貴に座薬入れられたりとか、診察されたりとか、まぁ見られてはいるけど、小さい頃に一緒にお風呂入ったこともあるけど、でも嫌なもんは嫌だ!
「絶対にやだ!」
「なんで?一緒にお風呂入ったことあるでしょ?」
「それは昔の話だろッ!」
「なんで嫌なの?俺はあやくんの全て好きだよ?」
「その呼び方やめろって!嫌なもんは嫌なんだよ」
「ごめん。でも菖綺は耳気をつけてって言っても気をつけないでしょ?」
「気をつけるから、入ってくんな」
「熱もあるのに?」
「知らねぇーよ!体温計が壊れてただけだろ?」
「俺は心配だから言ってるんだけど?」
「心配してくれなんて俺は頼んでないッ!ほっといてくれよ!」
「....」
「兄貴のそう言うお節介なとこが嫌いなんだよッ」
俺はなんでこんなにも怒ってしまったのだろうか。
兄貴が俺のことを心配してくれるのはありがたく思うべきだろ。
それでも兄貴に迷惑かけたくないと思ってた。
兄貴が俺じゃなく、自分を優先にして欲しいと。
兄貴のことが嫌いなんて、思ってないのに。
無理やり薬飲ませてきたりする医者の兄貴は嫌いだけど、それは俺のためだってわかってたから。
兄貴のことは大好きだ。
口には出して言えないけど、兄貴を大好きなのは本当だ。
でも自分が思ってることとは逆の言葉が口からこぼれる。
そんな自分が嫌だと何度も思ったのに、また言ってしまった。
兄貴を傷つける言葉とわかっていながら。
兄貴を傷つけてしまった。
気づいた時にはいつも、もう遅いんだ....。
兄貴が無言になって、やってしまったことに気づいた。
「菖綺、そろそろ黙らないと本気で怒るよ?」
「!?」
ともだちにシェアしよう!

