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兄貴の“弟”

兄貴が戻ってきた。 けど、今は兄貴の顔見れない....。 「しず、お前に嫌われたから泣いてるんだよッ」 「え?俺が?いつ嫌ったって?」 「お前が怒ってて怖いからだろ、いいから変われ」 「まぁ、それは全然変わるよ」 稜生(いつき)から兄貴に手渡されて、次は兄貴に抱きしめられた。 でもやっぱり稜生よりも兄貴の方が落ち着く。 そう思いながら、吐き疲れたのもあって、またウトウトしてきた。 兄貴と稜生がまた話してるけど、全然分からないや。 「しずが怒ってるからだろ」 「確かに怒ってるけど、菖綺じゃなくて俺自身に怒ってて」 「それを言われないと菖綺は自分に怒ってるって思うだろ?」 「そう、だけど」 「口答えすんな、菖綺が泣いたのはお前のせいだからな。だからちゃんと菖綺に話せよ」 「菖綺、」 「ん?」 「あれ?また眠たくなってる?笑」 あ、いつのも兄貴の声だ。 「ぅん」 「そっか。寝る前に少し俺の話聞いてくれる?」 「?うん」 「ありがとう。俺ね、菖綺に怒ってないよ。俺が怒ってるのは自分なんだ」 「?」 「菖綺に酔い止め飲んでって言って、飲んだ確認しなかったし、忘れてしまってた。それによって菖綺はキツイ思いしないといけなくて、菖綺の嫌なこともした。」 「ちがう」 「え?」 「おれが、、俺が飲まなかったから、兄貴たちに迷惑、かけて」 「迷惑なんて思ってないよ?それにね、迷惑は沢山かけていいんだよ!俺は菖綺のためならなんでも出来る!だから沢山迷惑かけてよ!!まぁでも、迷惑なんて1度たりとも思ったことないけど笑」 あぁ、やっぱり兄貴は優しい。 兄貴の弟で、兄貴が俺の兄貴で、本当に良かったと、そこだけは俺は恵まれてたんだと、そう思った。 もしかしたら兄貴もいつか俺を嫌いになるかもしれない。 それでもその日までは兄貴と一緒にいたい。 いつか終わりが来るかもしれないけど、それまでは兄貴の“弟”でいさせて欲しい。 そう強く思った。 “あの日”のように、いつかくるかもしれない終わりまで。 ☆後日談 あの後、帰ることになった。 菖綺が自分のせいだと思ってしまうので、帰り温泉に寄って帰ることにした。 ちなみに菖綺は温泉はあまり好きではない。 不特定多数と一緒に入る意味が分からないから。 もちろんそれを知ってる零軌は部屋に温泉がついてるところを探して、予約した。 本当は日帰りの予定だったけど、明日零軌も稜生も仕事は朝早くじゃなかったので、せっかくだからと、急遽泊まることにした。 零軌が菖綺と一緒に部屋のお風呂に入ると言ってたけど、菖綺の全力拒否と稜生が菖綺の味方をしたことで、一緒に入れなくて、稜生と大浴場に行った。 ふたりがお風呂から帰ってくると、浴衣を綺麗に着ることができなくて、途中で力つきてしまったのか、乱れたまま無防備に寝てる菖綺がいて、それを見た零軌が鼻血を垂らして、隣の稜生がドン引きしていた。 「....やばいな、変態....」 「いや、お風呂でのぼせただけだよ?」 と謎の抵抗をする零軌であった。 零軌と稜生は少しお酒を嗜み、遅くならないうちに布団に入った。 菖綺が寒くないようにと抱きしめたまま寝た零軌は暑苦しくて途中で起きた菖綺に怒られた。 その声で起きた稜生がシュンとしてる零軌と怒ってる菖綺に挟まれて寝る羽目になった。 零軌はどうにか菖綺の隣で寝たいので、稜生を挟んで菖綺に声をかけるけど、全部無視されて、眠たいのもあって機嫌悪い菖綺は無視しつづけていたらすぐ寝て、菖綺が寝たからと稜生に場所かわってと交渉したが、変わってもらえなくて、零軌はほぼ寝れなかったとさ....。 ちなみに宿代は零軌と稜生の割り勘。 金額は秘密♡

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