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甘い香りは、秘密のはじまり②
先ほどのやりとりを、僕と同じクラスのカースト最上位に君臨する男、大路 清雅くんに見られていたのだ。
ハーフアップにゆるく結ばれた黄金色のややクセのある髪に、すっと通った鼻筋。
サファイアの宝石のように美しい、切れ長の青みを帯びた瞳。
そしてその瞳の下には、セクシーな泣きぼくろがひとつ。
やや厚めの唇と相まって、僕と同じ16歳とは信じられないくらいの色香を彼は放っている。
ちなみに髪と瞳の色は、母親方の祖母がフランス人だから、天然物という噂だ。
そのため彼は名字の大路とかけて、みんなから王子様と呼ばれている。
そんなふざけたニックネームすらも笑えないくらいキラキラした、僕とは対極に位置するといっても過言ではない男。それが、大路 清雅くんなのだ。
しかもビジュアルがいいだけじゃなく、勉強もスポーツもできる。おまけに性格も気さくで、誰とでもすぐに友だちになってしまう。
……だけど完璧すぎる彼のことが、僕はちょっと苦手だったりする。
そのためこれまで地味平凡代表みたいな僕と彼の間には、接点なんてまったくといっていいほどなかった。
とはいえもし僕のほうから話しかけたら、彼はきっと分け隔てなく接してくれるに違いないというのも、本当はよく分かっているけれど。
そんな大路くんにいきなり声をかけられたものだから、びっくりしすぎてビクッと体が大きく跳ね上がってしまった。
「なぁ。……佐藤、だっけ? ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「えっと……。なんでしょう? 大路くん」
めちゃくちゃ動揺したため、情けないことに声が裏返ってしまった。
すると一瞬彼はきょとんとしたような顔で僕を凝視して、それからプッと吹き出した。
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