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甘い香りは、秘密のはじまり③

「ちょ……、おま。緊張し過ぎ。それに、なんで敬語なんだよ! 俺ら、クラスメイトだろ?」  肩を震わせながら、クスクスと笑う大路くん。  そのためとてつもなく恥ずかしくなり、思わず下を向いた。 「まぁいいや。今日ずっと教室内が、なんかめっちゃ甘いいい匂いがしてたんだけど……。その正体って、さっき中西に渡してたあの紙袋だよな? あれの中身って、なに?」  にっこりとほほ笑んで聞かれ、一瞬言葉をなくした。  変な汗が、顔面を伝っていく感覚。  それを見た大路くんは、切れ長の瞳をスッと細めた。  バクバクと、心臓が大きな音を立てて暴れているのを感じる。  落ち着け! 落ち着くんだ、僕!  なにか。……なにか、いい言い訳を考えるんだ! 「よく分かったね! あれは母さんが焼いた、クッキーだよ。彼に渡しておいてほしいって言われて、預かってたんだ」  言い訳として、別に苦しくはない……よな?  そろりと顔を上げ、大路くんの表情をこっそりうかがう。  すると彼は、なぜか疑うような視線をじっと僕に向けていた。 「ふーん……。っていうか佐藤から、いっつも甘い匂いがしてないか?」  顔を近づけられ、クンと匂いを嗅がれると、またしても体が小さく震えた。    どんだけ鼻が効くんだよ、犬か!  などというツッコミを、僕が大路君に対して入れられるはずもなく。  まだ少し動揺しながらも、必死にまた答えを探した。 「そうかな? 母さん、お菓子作りが趣味だから。そのせいで僕にまで、甘い匂いがついちゃってるのかもね?」    にへらと笑いながら告げると、彼は瞳を大きく見開き、それから僕に向かいキラキラとした視線を向けた。

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