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甘い香りは、秘密のはじまり④
……へ? なんで今、そんな顔を?
愛想はいいが、どちらかというとクールなイメージの大路くん。だけど今の彼は、期待に瞳を輝かせるわんこみたいだ。
「まじか……。いいなぁ、めちゃくちゃうらやましい!!」
社交辞令かとも考えたけれど、どうやらそうじゃないらしい。
そしてそこで、はたと気付いた。
そういえば、この男。……いつもお菓子を、手放さないなと。
それこそ授業中であっても、ひそかにもごもごと口を動かしている姿を、何度か目にしたことがある。
ということはつまり彼も、太陽同様、甘党なのかもしれない。……それも、かなりの。
あまりにも抱いていたイメージとは異なるその反応がおかしくて、今度はこっちが思わずプッと吹き出した。
「大路くんは、甘いものが好きなの?」
僕の問いに、ブンと大きくうなずく彼。
予想もしなかったその子どもみたいな反応を目にして、これまでの緊張が嘘みたいにほどけていくのを感じた。
だけど、考えてみたらそれもそうか。
いくら大人びて見えても、彼も僕や太陽と同じ、ただの高校生なのだから。
「すげぇ好き! けど手作りのお菓子なんか、中々口にする機会がないからさぁ。……びっくりさせて、ごめんな」
はにかむように笑って言われ、思わずドキッとしてしまった。
同性まで、こんなふうにドキドキさせてしまうとか。……王子様の無自覚な笑顔の破壊力、ほんと恐ろしすぎる。
だけどそんな笑顔を前にしたら、僕の作ったお菓子を食べた彼がどんな反応をしてくれるのか、見てみたくてたまらなくなった。
だから魔が差して、僕はついこんな提案をしてしまったんだと思う。
「もしよかったらなんだけど……。今度大路君にも作ってくれるように、母さんに頼んでみようか?」
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