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甘い香りは、秘密のはじまり⑦

 その翌日。教室内でクラスメイトたちに囲まれていた大路君の姿を登校してすぐに見つけたけれど、中々声を掛けられない情けない僕。  だけどすぐに彼はそれに気付き、満面の笑みを浮かべて軽く手を振ってくれた。 「おはよ、佐藤」  席を立ち、僕のほうに向かい歩いてくる大路君。  窓から差し込む朝の光を浴びて軽く手を挙げる彼の姿は、まるで青春ドラマのワンシーンみたいだ。  正直めちゃくちゃドキドキしたし緊張もしていたから、それを誤魔化そうとして口を開いた結果。  情けないことに僕はコミュ障丸出しの、早口になってしまった。 「おはよう、大路君。これ、母さんから預かってきたから。保冷剤も、入れてあるから。お昼休みにでも食べてね、それじゃあ!」  あまりにも恥ずかしくて情けなくて、保冷剤とシュークリームの入ったお弁当用の袋だけ手渡すと、さっさと撤収することにした。  だけど彼は僕の手首を掴み、それを許してはくれなかった。   「待て待て、佐藤! お礼くらいちゃんと言わせてくれよ」  ククッと笑うその顔は、心底楽しそう。  なのでそれに少しいら立つのと同時に、先ほど以上にドキッとさせられてしまった。  ……王子様の笑顔の破壊力、やはり恐るべし。 「しかし、昨日の今日でもう用意してくれるとは思わなかったわ。ほんと、ありがとな。でも、ごめん。こんなにもすぐに作ってもらえるって分かってたら、なんかお礼を用意しておいたんだけど……」

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