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君についた嘘③
「……うん、そうだよね。母さんも彼のことが大好きみたいで、いつも同じようなことを言ってるよ」
ひとつ嘘をつくと、芋づる式に嘘が積み重なっていく。
だけどこれは誰かを傷付けたりする類の嘘じゃないから、きっとセーフ……だよな?
罪悪感をごまかすみたいに、半ば無理やりそう結論付けた。
そろりと視線を上げて、彼の表情をうかがう。
だけど彼はやっぱり嬉しそうに笑っていたから、少しだけまた胸が苦しくなった。
***
「……太陽、どう思う?」
今日あった出来事についての感想を、太陽にスマホ越しに求めた。
すると彼は数秒考えてから、ゲラゲラと爆笑した。
「ちょっと、太陽! 笑い事じゃないから!」
僕の真剣な相談を笑われたせいで、自然といつになく大きな声が出た。
なのに太陽はなおもヒィヒィと笑いながら、あきれたように答えた。
「どう思うもなにも。めちゃくちゃ面白いことになってんじゃん、まじで腹痛ぇ……!」
相談する相手を間違えたような気がしないでもないが、残念ながら僕には、絶望的なまでに友だちがいない。
そのためほぼ自動で、この男が選択されてしまったようなものなのだ。
ひとしきり笑ってから太陽は、今度はちょっと真面目な声色で言った。
「てかさ、別に本当のことを話してもよかったんじゃないか? たぶんだけどあいつなら、お前がりとるだってこと、勝手に吹聴してまわるようなこともないだろうし」
たしかに、こいつの言うとおりかもしれない。
大路君は僕の秘密を、誰彼構わず触れまわるようなまね、絶対にしないはずだから。
だけど、嫌だったんだ。……彼の推しであるりとる=僕だと知られて、失望されてしまうのが。
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