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魔法にかけられて〜Side清雅〜①

 幼い頃から、甘いものが好きだった。  だけどそれを好んで手にする姿は次第に、『らしくない』だの、『案外子供っぽいところがあるんだね』だのと言われるようになった。  なのにいつの間にか当たり前みたいになった、『王子様』の愛称。  それが大路という名字からきているのだと分かってはいても、いつまでたっても慣れることはない。  なぜなら本当の自分は王子様などからは程遠い、粗野でがさつな人間なのだから。  それでもそこそこ勉強も運動もできた上、母方の祖母譲りの青い目と金髪のせいで、どうやら人々の意識は補正されてしまうらしい。  そのため俺のことを詳しく知らない人間までもが、王子様扱いする始末。  告白されて、嫌いじゃないからなんていう最低な理由から、なんとなく付き合うことになった女の子も過去に何人かいた。  だけど彼女たちは皆、『いざ付き合ってみたらイメージと違う』と言って、あっさり離れていった。  だからある意味、お互い様と言えるかもしれない。  本当の自分をちゃんと見てくれる友だちもいるにはいるが、それはほんの一握り。  ……こんな毎日は息が詰まりそうになるし、勘弁してほしいというのが正直な心境だ。  そんな時たまたま目にした、『PM3時の魔法使い』という淡々とお菓子を作る手元だけを映した動画。  そのサイトではりとると名乗る顔出し不可の男子が、毎週金曜の午後3時に、スイーツのレシピを配信していた。

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