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魔法にかけられて〜Side清雅〜②
彼の作る洋菓子はめちゃくちゃ華やかというわけではないのに、見ているだけでよだれが垂れそうになるほどおいしそう。
画面越しだというのに、その甘い香りまでもがこちらに伝わってくるみたいだった。
いつもりとる君は簡単に作り上げていくし、レシピもシンプルなものが多いため、もしかしたら自分にも作れるかもななどと考えないでもない。
しかし、なんていうか。……聖域を侵してしまうような気がして、なんとなく俺は作ることができないまま、ただ彼がスイーツを作っていく様子を見ることだけが楽しみとなっている。
今では器用に解説もできるようになったが、最初の頃のりとる君の配信は、ぶっちゃけかなりひどいものだったように思う。
緊張のあまり声だけでなく、手まで震えてしまうこともしばしば。
だけどうまくシュー生地が膨らみきらず、ちょっと失敗してしまった時、彼は言ったのだ。
『うーん……。ちょっと今日のシュークリームは、不格好になっちゃったかもですね。だけど、見た目はそこまで気にしなくて大丈夫。中身が、大事ですから。おいしくできたから、大優勝です!』
撮り直したりせずに、そのままその映像を使う彼に、逆に好感が持てた。
シュークリームに対しての見た目はそこまで気にしなくて大丈夫、中身が大事というそのひとことが、まるで自分に向けられた応援のように思えてしまったのだ。
そのためこの日から俺は、りとる君の大ファンになってしまった。
とはいえ俺が最初に見つけた時には、まだフォロワーはたったの5人のみだった。
なのにあれよという間に人気は広がり、今ではすっかり有名人になってしまった。
俺のほうが先に見つけたのになどというつもりは毛頭ないが、古参のファンを気取ってしまいそうになるのは自分でもどうにかせねばと思うところだ。
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