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魔法にかけられて〜Side清雅〜③
そして、そんな中。2年になった俺はクラス内に、いつも甘い匂いが漂っていることに気付いた。
その匂いの元が分からず、なんとなくもやもやし続けること数ヶ月。
しかしつい先日、ついにその匂いの元が誰なのか気付いた。
同じクラスの男子、佐藤。彼とすれ違った瞬間感じた、甘い芳香。
どうやら彼が放っているらしいと分かると、居ても立ってもいられなくなってしまった。
観察すること、数日。
彼はかなりおとなしい性格みたいだから、それまでほとんど声らしい声を聞いたことがなかった。
そして隣のクラスの中西に彼が匂いの元と思われる紙袋を手渡すのを目にして、我慢できなくなり声をかけてしまった。
あの時の、あいつの顔ときたら。
普段はあまり大きいとはいえない三白眼をカッと大きく見開き、俺のことを凝視する佐藤。
『えっと、はい……。なんでしょう? 大路君』
声を震わせながら、彼は答えた。
なんで同じクラスの野郎相手にこいつは、こんなにも緊張しているのか?
人見知りなんだとしても、あれはさすがに動揺しすぎだったと思う。
あの時の彼の表情を思い出し、またつい吹き出した。
あまりにも緊張しているその様子を見て、少しかわいそうになってしまった。
だけどそれ以上に、彼のことがもっと知りたいと思った。
だって佐藤はこれまで俺の周りに、あまりいないタイプの人間だったから。
それにやっぱりあの匂いの元も、気になるし。
そう思ったから、俺はその欲求に忠実になることにした。
こそこそと隠すようにして中西に紙袋を手渡していたようだから、おそらく佐藤はその中身について、あまり誰にも触れられたくなかったのだろう。
それが分かっていたから、あえて逆に直球で聞くことで、逃げ場を奪った。
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