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魔法にかけられて〜Side清雅〜④
佐藤と、話してみた結果。あの袋の中身は彼の母親が作った、クッキーであると。
そのため彼の母親に実際に遭遇したわけでも、それを俺が貰えるわけでもないのに、一気にテンションが上がってしまった。
そんな俺を見て、彼はプッと小さく吹き出した。
その仕草は、いつもおとなしくて静かな彼からは想像もつかないくらいかわいくて。
……男相手だというのに俺は、ちょっとドキッとしてしまった。
でもそのおかげで、思わぬ収穫があった。
なんと佐藤は彼の母親にお願いして、俺のためにスイーツを作ってもらえるよう取り計らってくれることになったのだ。
実際にりとる君が作ってくれるお菓子を、食べられるわけじゃない。
それでもお菓子作りが趣味な人が作ってくれるのであれば、きっとそれに近いものが仕上がるに違いない。
俺は、迷った。おおいに、迷った。
ひねり出したオーダーは、シュークリーム。
だってこれは俺にとって、特別なレシピだったから。
あのあとさらにレシピは改良され、誰でもびっくりするくらい簡単に作れるようになったと、りとる君は語っていた。
その声はいつになく得意げで、見たこともない彼のドヤ顔を想像して、思わず爆笑してしまったからよく覚えている。
佐藤は俺のオーダーを快く受け入れてくれた上、翌日にはさっそく完成したシュークリームを持ってきてくれた。
だけどさすがに昨日の今日で作ってきてもらえるとは考えていなかったから、お礼の品をなにも用意できていなかった。
そんな俺に対して彼は、食べた感想だけ聞かせてくれたらそれでいいと、笑って言ってくれた。
なのでちょっと心苦しくはあったけれど、素直にその厚意を受け入れることにした。
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