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第21話 豪華タワーマンションで始まる日常

輝のマンションは、想像以上に豪華だった。 都心のタワーマンション、最上階。 窓からは、東京の夜景が一望できる。 「……ここ、本当に住んでいいのか?」 「当たり前だろ。お前の家だよ」 輝が、俺の荷物を運び入れる。といっても、俺の荷物なんてダンボール三箱程度。 「荷物、少ないな」 「……必要最低限しか持ってねぇからな」 安アパートの狭い部屋。カビ臭い畳、隙間風が入る窓。 あの場所に比べたら、ここは天国みたいだ。 「そっか。じゃあ、これから一緒に買い物行こうな」 「買い物?」 「うん。服とか、生活用品とか。圭に必要なもの、全部揃えよう」 「……でも、金が」 「気にしなくていいよ。俺が払う」 輝が、俺の頬に手を添える。 「お前のためなら、いくらでも使うから」 「……っ」 顔が熱くなる。こんな風に言われるの、慣れない。 「さ、部屋を案内するよ」 輝が、俺の手を引いて歩き出す。 「ここがリビング。キッチンも広いから、料理とかできるよ」 リビングだけで、俺のアパートより広い。 高級そうなソファーに大きなテレビ、洗練されたインテリア。 「輝、料理できるの?」 「まあ、基本的なことはね」 意外だった。こんなに金持ちなのに、自炊するなんて。 「じゃあ、俺も手伝う」 「ありがとうな。でも、無理しなくていいからね」 輝が、優しく笑う。 「圭が疲れてる時は、俺が全部やるから」 「……ありがとう」 キッチンを抜けて、廊下を進む。 「こっちが書斎。圭も使っていいよ」 ドアを開けると、壁一面の本棚。 ビジネス書、経済書、投資の専門書。 「すごい……」 「興味ある本があったら、読んでいいから」 「……本当に?」 「もちろん。むしろ、圭にも勉強してほしいし」 輝が、俺の肩に手を置く。 「いずれは、俺のビジネスパートナーとしても活躍してほしいから」 「パートナー……」 その言葉に、胸がドキドキする。 「あ、ここが寝室」 ベッドルームに入ると、キングサイズのベッドがあった。真っ白なシーツ。ふかふかの枕。 「……でかいな」 「二人で寝るから当たり前じゃん」 「……っ」 顔が熱くなる。毎日、輝と同じベッドで寝る。 その事実がじわじわと実感として湧いてくる。 「嫌?」 「……嫌じゃねぇけど」 小さく答えると、輝が嬉しそうに笑った。 「よかった」 輝が、後ろから俺を抱きしめた。 「これから、毎日一緒だな」 「……ああ」 胸がドキドキして、輝の体温が背中に伝わってくる。 「圭」 「……なに?」 「幸せ?」 その質問に、俺は少し考えた。 ……幸せ。 そうだ、今の俺は――間違いなく、幸せだ。 「……うん。幸せだ」 「よかった。俺も、幸せだよ」 その言葉が、嬉しかった。 「圭、今日は疲れてるだろ? 早く休もう」 「でも、荷物の整理……」 「明日でいいよ。今日はもうゆっくり休めよ」 輝が俺をベッドに座らせた。柔らかいマットレスに身体が沈む。 「気持ちいいな……」 「そう? このベッド、オーダーメイドなんだ」 「えっ」 「圭が来るって決まってから、二人用に作り直したんだ」 「……そこまでする?」 輝の本気度が、改めて伝わってくる。 「シャワー、浴びてくる?」 「……あ、うん」 「じゃあ、一緒に」 「は?」 「一緒に入ろう」 輝が当たり前のように言う。 「……いや、恥ずかしいだろ!」 「今更? この前も一緒に入っただろ」 「……それは、ホテルだったし」 「ここも同じじゃん。むしろ、これから毎日一緒に入るんだから」 「毎日!?」 「当たり前だろ。俺、圭の身体洗うの好きだし」 顔が真っ赤になる。 でも、輝は俺の手を引いてバスルームへ向かった。

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