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第4話 メディカルチェック
刹那は空腹状態のまま要と共に病院に連れてこられた。病院は高層ビルの中にあり、地下の駐車場から病院のあるフロアまで直行のエレベーターで、首輪と白いシャツだけで要の後ろに隠れるように後をついていった。
男性の看護師が3名つき、シャツを剥ぎ取られ、身長や体重計に乗るよう指示される。
「身長170cm、体重53.2kg、体脂肪率14%」
肩幅や胸囲や太もも、ふくらはぎ、首回り、上腕から各指のサイズなど細部まで計測が続いた。ぶら下がっている性器のことなど誰も気にしていない。
採血の後、聴力、視力、肺活量、握力などの計測が続いた。看護師たちがああまりにも刹那が全裸であることに注視しないため、首輪だけの姿に徐々に慣れてきた頃に医療用ベッドに横になった。
心電図、胃カメラ、大腸カメラと検査が続いた。局部麻酔の使用があり、カメラの挿入時の痛みはなく、ただ不快感だけがあったが、緊張の連続から刹那はうつらうつらし始めていた。
「大腸内部も炎症や傷はなし」
刹那はカメラを見る気力もなく目を閉じていたが、カメラ以外のものが挿入されたので、ぼんやりと目を開けた。
「直腸約15cm。直腸S状部約80度」
画面に映るのは定規のようなもので、内部の計測を行っていた。
初めて大腸検査を受けるといえども、サイズを測るわけはないだろうとおもったが止められるはずもなく「上直腸弁約2センチ」と自身の内臓のサイズを聞かされ、まるで商品検査のようだと鳥肌がたった。
体内から全ての計測器がだされた後、ぐったりとしたまま案内された椅子に座ると、看護師により両手両足、腰をベルトで椅子に縛られた。椅子の足が大きく開き、股間をドアに向けるように開いた。続いて椅子が後ろに倒れたところで、内診台だと気づいたが遅く、屈辱的な姿勢のまま我慢するしかなかった。椅子が倒れたことで、尻から股間の支えがなくなったが四肢と腰を拘束されているため体に力を入れずとも姿勢を保持し続けられた。
男性医師が現れ、ビニルの手袋をはめながら「麻酔が効いているので痛いことはないと思いますが、我慢してくださいね」と不穏なことを言った。
まず、刹那の項垂れたペニスにメジャーを宛て「弛緩時。長さ8.2cm、直径8.5cm、睾丸直径右が……」と性器のサイズを計り始めた。数値化される羞恥に刹那は顔が紅潮していくが、腕が縛られているためなにもできなかった。医師がペニスにローションを垂らし、扱き始めたがなかなか勃起しなかった。
「先にアナルを測ろう」とローションをさらに垂らしてアヌスへと指を入れた。硬い穴を推し開ける感触がする。
「うーん。未開通かな。今は約1.8cm」
医師は、次に圧力センサーが複数個ついた細くしなやかなチューブをアヌスへと差し込んだ。
「括約筋圧は80mmHg。ぎゅっとお尻に力を入れて」
淡々としたオーダーに、素直に腹にぎゅっと力を入れる。尻の内部に初めて経験する違和感があった。
「力を入れた状態で、210 mmHg」
看護師の計測を、医師は淡々と手元のボードに書いていく。
「乳輪右・左共に直径23mm。薄いピンク色。乳頭、左右共に高さ3mm、根本直径5mm。薄いピンク色、極めて柔らかい状態」
「口を思いっきり開けて」
上歯と下歯の間に計測器が当てられる。
「上下切歯間45mm」
次はプラスティックの円筒状のものが入れられた。最初は余裕があったが、徐々に太さが増えてもうこれ以上口が開かないといったところで止められた。
「唇の延伸40mm」
「舌のサイズを計ります」
ビニルの手袋に舌先をつかまれ、無理やり引き出され計測器が載せられる。
「舌の可動性能26mm」
「吐き気がしたら右手を動かしてください」
ゴム越しの指が舌の上を押していき、舌根のところで強い吐き気を感じて右手の平で椅子を叩いた。
「嘔吐反射の閾値70mm。軟口蓋で即座に強い拒絶反応あり」
軽いえづきに咳こんでいると、鼻先で強いアーモンドのような香りのする布を振られた。とたんに酩酊感に支配された。なんだ、これはと刹那が驚いている間に、股間に再度ローションが振られてペニスを機械的に扱かれ始めた。
「っ、あっ……んんっ」
今度はみるみる間に勃起していき、先走りも溢れてきた。
乳首も勃ちあがり、全身の産毛を撫でられている感じがした。
四肢を縛っている革ベルトの硬さもより、クリアに感じる気がした。
「勃起時のサイズ。長さ13.8cm、最大部の周囲は11.6cm。角度は約30度」
他人に勃起時のサイズを口にされ、なぜか急に射精感が始まった。ペニスを扱く看護師に陰嚢が上がっているのがわかったのか、上下に擦るスピードをあげられた。
「はっ、はっ、はっ……あ、ああぁっ」
ついに無理やり射精され、刹那は目を閉じた。
他人に射精を強要された恥ずかしさと、開放感でめまいと疲労感に襲われた。
刹那が逡巡している間に、噴出した精液はカップに集められ量や色をメモされた後、内容物の計測にまわされていた。続いて扱かれるが、射精直後ということもあり完全に固くならないまま、無理やりに2回目の射精が行われた。量は初回の半分以下だったが、それも同じように計測へと回される。
射精後の弛緩した状態で、尻と足を支えるアームが動き、最大限まで刹那は開脚される。股間の筋に痛みを感じるところで止められ「股関節開脚角度110度」と計測された。
その後、開脚は90度まで戻されて、前立腺を刺激してのドライオーガズムや潮吹きの確認も行われたが、どちらも反応はなかった。
医療用薬物で弛緩したままの体にシャツを羽織られ、駐車場まで運ばれたところまでは覚えているが、眠気に襲われて気づいたときは自室で全裸で寝ていた。
身体中を医療用ゴム手袋で触られた感触を思い出す。
乳首が固くなる感触に、体が先に順応しているようで恐怖を感じる。
頭の芯が痺れているようで眩暈を感じるがそれを上まる激しい空腹を感じた。
壁に吊るされているシャツを羽織り、昨日案内されたキッチンへと向かった。サンドルはすでに準備を始めていた。
「おつかれさまでした。軽めの食事を用意します」
テーブルの端に刹那が座ると暖かいお茶がだされた。大きめの茶飲みいっぱいのそれをゆっくりと口に含むと暖かさが体の中心を通り、体中へと広がっていった。
「これから俺はどうなるんでしょうか?」
疲れが滲む独り言のようなそれに、サンドルは「玲様との契約を履行されるのみでしょう」と感情を含まない声で答えた。刹那は目の間に並べられた、わずかな米飯と小さく切られた野菜と肉が見えるホワイトシチューをゆっくりと嚥下したが、喉をシチューが通る時に体の内部まで計測されたことを思い出し、自分が商品のように思えてなんの味もしなかった。
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