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3.
「まぁ⋯⋯そう言われてしまったら⋯⋯」
「なら私でも良かったのでは?」
「誰行っても大河様の機嫌を損ねてしまいますが、その損ねる可能性が低い人もいると思われます」
「⋯⋯その話は一旦置いといて」
小さな物を持つように両手で幅を取ったそれを横に置く仕草をした。
「話を戻しますが、相手が相手というのもありますが、どっちにしろ後ろも見ておきたいと思い、その場で一回転してもらったんです。その時、お尻辺りを見ましたら、その⋯⋯このような形が見えように思いまして⋯⋯」
口にするのを憚り、手で逆三角形を作った。
今井と上山はイマイチぴんときてなかったようで、揃って首を傾げていた。
このジェスチャーじゃ分かるはずもないか。
口にするべきかと思ったが、江藤が小さく口を開けていたのが目に入った。
明らかに二人とは違う反応にすかさず突いてみることにした。
「江藤さん、何か知っているんですか?」
「何もっ! 何も知りません! 姫宮さんがじょ⋯⋯そのようなものを穿いているなんて⋯⋯っ!」
「そのようなもの⋯⋯?」
そのようなものと言う前に何か言いかけたようだったが、江藤はその曖昧な言葉ごと両手で口を塞ぎ、これ以上は言いませんと首を横に振った。
姫宮の下着事情を知っているようだ。羨ま──⋯⋯いや、何故江藤だけが知っているのだろう。
江藤よりも自分の方が姫宮と一緒にいて、親しい間柄だと自負していると思っていたのだが、江藤にしか教えてない秘密があったとは。
「そういえば、江藤さんが姫宮様のことを『さん』付けをしたのはいつでしたっけ?」
「あれは確か、姫宮様が出かけたいと、ですが一人で行かせるのは心配だからと江藤さんに行かせた時ですね。⋯⋯あ」
今井が声を上げ、江藤が目線を逸らしたのは同時だった。
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