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江藤に後をついて行ってもらったものの、やはり無事に帰ってくるのかと心配でたまらなく、落ち着かないものだったが、安野にとってはようやく帰ってきた姫宮に心底安心した。
そういえばその時も尾行という形で頼んでいたはずなのに、一緒に帰ってきていた。
今思えば違和感であったのにそれに気にも留めなかったのは、一人で買いに行きたかった目的の一つであったのだろう、愛息子に渡した時の安心したように嬉しそうな眼差しで見つめていたのを微笑ましい気持ちでいっぱいになったからだろう。
姫宮のことを一つでも知っていることが羨ましい。だが、やはり一人で行くほど人に知られたくないものであれば、こうやって何かのきっかけで江藤だけしか教えてないものならば、江藤に直接訊くべきではないとは頭の隅では理解していたものの、やはり羨ましいとこの口で何が何でも聞き出したい気持ちが駆られてしまった。
しかし、一歩先に上山が口を開いた。
「皆さんが姫宮様のことが大切で、何かと知りたい気持ちは分かります。ですが、外出されるのが難しい方がおひとりで行くほど誰かに知られるのは憚られるデリケートな話です。いくら仲良くしている私達でさえも、人に知られたくない秘密が一つや二つあるでしょう。この話は今回限りにして、姫宮様の前では何もなかったように何も見てなかったようにいつも通りに接することを推奨致します」
静かに、されどこれ以上騒ぎ立てようならその口を塞ぐぞという怒りをチラつかせているように安野の目にはそう見えた。
彼女はいつも冷静に、仕事を少しの妥協を許さず完璧にこなす年下であれど憧れの存在だ。
事を淡々とこなすその姿は無駄な動きもないが、同時に表情もさほど表に出さないため、ミステリアスさも兼ね備えていた。
だから、説得力のあるその言葉は場合によっては怒らせてはならないと神経をピリつかせた。
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