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第15話 慰み
セスへの案内を終えてから部屋に戻った。扉を閉め、鍵をかける。そして手を震わせながら平服を脱ぐ。そのあたりから耐えられなくなり、扉に背を預けたままずるずるとゆかに座り込んだ。もぞもぞと下着ごとずり下げる。既に性器は先走りで滑り、わずかに勃起していた。
「……っ」
躊躇いなく手を伸ばし、竿をゆっくりと擦り上げる。
神に仕える身でありながら浅ましい行為が止められない。別にいい。この世界の神なんて、自分が勝手に作っただけの存在で、いるはずがない。たとえ存在したとしても、一部の人間のみをその視界に入れる、気まぐれで、我儘で身勝手な者なのだろう。そんな奴に遠慮するつもりは無かった。
「……ん、ふ……っ」
ここ最近、自慰の回数が増えた。一度頭の中を性欲に支配されると、気持ちよくなることしか考えられなくなる。ささやかな悩みではあるが、原因は深く考えずとも見当はつく。この体の年齢と、閉塞的な状況。そして触れた人肌が忘れられないからだ。
今日、案内の最中、セスに何度触れられたことだろう。
転生前は、滅多に自慰なんかしなかったのに。
家がそれどころじゃなかったし、想像する相手もいなかった。女性はもとより苦手で、セックスの相手どころか、誰かと手を繋ぐことすら妄想が及ばなかった。
だから生まれ変わった今になって、肌に触れられた一瞬に縋るように、身体が馬鹿になっているんだろう。精通したての中学生みたいだ。
「ぅ、あ……っ」
完全に勃ち上がり、敏感になった先端に触れる。鋭い痺れが全身に広がって気持ちいい。あふれる粘液を指の腹で押さえつけてはぐりぐりと弄んだ。
「んん……っ」
セスのことは何も知らない。人を傷つけることのできる拳を持つ人間。罪を犯してこの施設に閉じ込められた人間としか。
そして今は、自分に付き従う存在になった。主人公を乗っ取ったこの立場を脅かされる恐れもない人間。
そんな彼のことなんて、全然好きじゃない。だからこれはただの衝動的な欲求だ。
「は、……ぅ……」
精液を纏った指を後ろの窄まりにあてがう。つぷりと入れただけで、ひくつく後孔は面白いほどに指を呑み込んでいった。
化け物に初めて触れられた時も、自分で自分を慰めた。あの時は、初めての自慰で、この身体が敏感なこともあって前を少し擦るだけで直ぐに達したのに。今は後ろも欲しくてたまらない。人間に触れられて具体的な行為を想像したからかもしれない。
「んんっ……あ、ああ……いい、きもち、いいっ……」
あまりの快感に声が漏れる。頭が真っ白になり、身体が快感ばかり拾おうと無意識に腰を振り、指をいいところに当てようとする。
唯一残った理性で、声を抑えるために枕に顔を埋める。うつ伏せになった体勢では、シーツに性器が擦れる。後ろを指で犯しながら、へこへこと下手くそに腰を振り、前からも快感を得る。まるで獣の発情期だった。誰でもいい。この隙間を埋めて欲しい。
そんな中で、唯一人間らしいことを願うなら。手に入れたい。堅牢な薄暗いこの場所で、前世では決して得られるはずもなかったものを。穏やかに衝動を発散させられる居場所を。
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