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第34話 暗闇

今日もうなされて飛び起きる。あの日以来、リュナは起きた先も夢か現実か分からなくなった。瞼を持ち上げても、自分がまだ夢を見ているんじゃないかと思うことがある。今日も、そんな日だった。 それでもふらふらと部屋を出て歩いた。午前中は礼拝がある。教典を読まなければ。皆にはどこまで教えたんだったか。 ぶつぶつと何かを唱えるようにして歩いていく。それを見た者たちが噂する。 「やっぱりおかしいよ」 「日に日にやつれていくよね」 「隈もひどいし」 リュナにはもう、彼らの声が現実なのか、自分が生み出した妄想なのかも分からない。 「おれが休むように言ってこようか?」 なのに、聞きたくないヴィオの声だけがはっきりと聞こえる。うるさいと怒鳴りつけてやりたかった。しかしそうしたらまた噂されてしまう。みんなが彼を好いていくし、ようやく作った自分の居場所がなくなってしまう。 聖堂に行っても誰もおらず、リュナは日が暮れるまで待ちぼうけを食らった。と言っても日は出ていないから、どれだけの時間が経ったか自分でもわかっていない。 ただ誰も来ないなと悟った時、部屋に戻ることにした。食欲は湧かなかった。倦怠感とともにベッドに横になる。 そんな日々を何度か繰り返したら、次第に夜の折檻をする気力もなくなっていった。すると今度はヴィオの方が呼びに来る。今日はもういいと追い払っても帰らない。ぼうっとしているリュナをよそに部屋を片づけ、最後には同じ布団に入る。 ヴィオに対する拒否感は消えない。あんなことした相手の隣で寝ようなんて頭がおかしい。気味が悪い。気持ち悪い。彼が寝入ったのを見計らって、リュナは外を歩くようになった。 どこに自分の味方がいるんだろう。本当の自分の願いを、寂しさを、分かってくれる者がいるんだろう。 ヴィオが部屋を訪ねてくる前、地下室に行った。底冷えする場所で、暗闇に目を凝らしても、何の気配もなかった。 ずっと自分の味方をしてくれていたのは、あの化け物だけだった。忌避されるような気持ちの悪い生物だったけれど、新たな訪問者が来る度に、リュナの指示に従って人を罰した。コイツが主人公なのではと恐れる自分の心を読むように。 向こうも懐いてくれていたと思う。手足に何度も触手を絡ませてきた。あのまま撫でてやればよかった。名前を付けてやればよかった。あいつはどんな名前で呼ばれることを望んでいたんだろう。 「リュナ」 背後から名前を呼ばれた。今一番聞きたくない声だった。 「……どうして」 後ろから腕を回され抱きしめられる。今欲しいのはこの腕じゃない。 「どこ行こうとしてたの」 「……地下」 自分の部屋にはヴィオがいるから、他の入口を探していた。 「うれしい。やっぱりおれのこと好きだったんだ」 「全然好きじゃない。気持ち悪い」 ヴィオはこちらの疑問に答えない。会話も成り立たない。リュナが逃れるように身を捩っても意味がなかった。余計に逃がすまいと力を入れられる。首をくすぐる吐息に肌が粟立つ。 退けと突き飛ばして、気持ち悪いと罵倒して、また蹴ればよかった。でも地下に行きたかった。化け物が戻ってくるかもしれないから。 リュナは視線だけでも地下の入口を探せないかと、暗闇をただ見つめていた。

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