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第67話 花はきらい
行為は、揺さぶられ、何度も中に出されてようやく終わった。性器の抜けた穴から、ごぽりと白濁の液が溢れる。それがたまらなく寂しかった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
気づけば謝罪の言葉を口にしていた。何に対して謝っているのか、自分でも分からない。濡れる瞳がどこを見つめたいのかも定かじゃない。
ただ、自分が悪いということだけは、最初からすべて分かっていた。
母の夢の食い物にされている姉を助けていれば。級友に「仲良くなろう」と自分から声をかけていれば。姉と、自分を比べなければ。劇的ではなくとも、穏やかな人生を歩めていたはずだ。
しかし今はそこまで思考が回らない。全て、自分が悪いという場所で止まった。
慰めるように、ヴィオが頬を撫でる。知らないうちに伝っていた涙を指で拭った。
その指を追いかけていくと、視線は端に窓をとらえた。
「花……」
いつの間にか、そこには花が飾られていた。すごく嫌な気持ちになっていた花とは違う。青と白の、小さな花。それでも――――。
「花は、きらい……」
君は華があるね。そんな言葉を、どこかでよく聞いていた。君というのは、僕じゃない。だから僕には華なんてなくて。だから僕にはどうしても欲しかったものが手に入らなくて。だから――――。
「花は、きらいだから、ふんづけた」
あれはいつ、どこでだっただろう。目線は高かった。背の高さは、今と同じくらい。外のような、中のような場所。時おり大きな何かがガタゴトと揺れる音が頭上から聞こえる。自分はほとんと毎日、その場所を通っていた。
「床に、花が落ちてた……それを、ふんづけた……」
近くに、花がたくさんある場所があった。そこでは何かと交換して、人が花をもらっていた。いくつかをまとめて束にして、綺麗な紙とリボンで包むのだ。
自分が踏んだ花は、その中からこぼれ落ちたものだと思う。
小さな花だった。その辺に咲いてたら、きっと雑草扱いされて誰にも見てもらえないような花だった。道行く人たちもその花に気づかなかった。だから踏まれて、ぐしゃぐしゃになっていた。それでも、その物体を人は花と呼ぶのだろう。
腹が立った。まるで自分みたいで。しかし自分にはない言葉で呼ばれていることが妬ましくて。
だから、その場を行き交う人に紛れて、一度、さりげなく踏んでみたのだった。
「知ってるよ。見てたから」
どこで?どうして?そんな疑問は、浮かんですくに消えていった。
「でもすぐに後悔して、その一輪を持って帰った。前みたいに元気にならないのは分かっていたけど、花びらなんてほとんど無かったけど、ちゃんと生けてあげたんだよね。最後まで花らしくいられるように」
彼の言うとおりだった。花瓶なんて持ってなかった。だから、自販機で飲み物を買って、飲み干して、手に残ったペットボトルで工作をした。それを無理矢理花瓶だということにした。……花瓶って、なんだっけ?
「ねぇ、リュナが綺麗じゃないなら、この世界のどこに綺麗な人がいるの?」
少年は、僕の頭を撫で、指で髪を梳き、何度も綺麗だと言った。綺麗ってどんな意味なんだろう。分からないけど、きっと華と似た意味だ。
「綺麗なリュナ……今度、たくさんの人に見てもらおうね」
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