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第68話 理由
生まれ変わったところで根本は変わらない。どうしても上手くいかなかった。そこから這い上がる気力もなかった。そんな自分が大嫌いだった。
だからか。彼は振舞った通りに返ってくる崇拝や敬愛ではなく。ただひたすら自分を好きだと好意をぶつけ続けた。
惨めで汚い自分をさらしてもずっと。
気味が悪いはずだ。大嫌いな自分を大好きだという奴なんて、どうしたって理解できないんだから。
目を覚ますと、頭は相変わらず痛んだ。今までの自分に、何が起きていたのか分からない。惨めな目にあって泣いていたこと、それと強烈な快感に翻弄されたこと。すべては劇場で上映されていた演目のようで、見終わったあとのようにぼんやりしていた。夢の世界は終わり、有り体にいえば……正気に戻った。しかしそれは一瞬のことで、またここから自分の人格とでも言えるものは壊れていくのだろう。そんな予感があった。
「あっ……」
と同時に、体内に侵入してくる異物に気づいた。既に挿入に慣れきったそこは、異物を追い出すどころか食むように締め付け、さらに奥へと誘い込もうとする。
「起きたんだ。ちょっとの間、飛んじゃってたんだよ」
「ひっ、ぁ……っ」
飛んだ、という言葉が何を指すかは分からない。それでも名残りらしきものは体のあちこちに感覚として残っている。ゆっくりと挿れられるのが気持ちいいこと。耳に息を吹きかけられると頭が痺れるように何も考えられなくなること。肌を指でなぞられる度に、こちらの意思など関係なく甘く震えること。
「あぁっ……」
中に出される。もう何回目か分からないくらい。案の定抜けるとごぽりとこぼれ落ちた。
「ぅあ……っ」
達する感覚が抜けない。出された下腹の中から熱が広がる。もう挿入されていないのに快感を貪ろうと腰が虚しく動く。
「ん……ぁ……」
熱の源になっている箇所をさすると、妙な模様があった。彼が魔力で刻んでいたような気がするが、記憶は朧気だ。
しかしどうにも薄い気がする。単純に時間経過なのか。性器が抜かれたからか奥に注がれたからか。縁から肌に取り込まれていくように消えようとしている。そして消えかかるごとに頭の中の靄が晴れていく。
「嫌だ……!」
精液が溢れていく後孔を閉める。零したらもっと薄くなってしまうんじゃないだろうか。
「早く……また魔法で……!」
「たまには普通の状態でもしたいんだけどな……」
「できない!僕はしたくない!」
彼が嫌いだから抱かれたくないという話じゃない。めちゃくちゃにもされず、ただ甘やかされているだけの自分が嫌だった。でも、いくら訴えてみたところで、彼は自分を痛めつけたりはしないんだろう。だったら理性を飛ばしてほしかった。
「惨めな自分を……もう思い出したくない……壊してほしい」
ヴィオは笑う。怒ったような、悲しむような顔だ。そんな表情を見せるのは珍しく、リュナが覚えている限りでは初めてだった。
少しだけ、気分がいい。自分では届かない主人公とやらの顔を歪められて。
「……壊せよ」
ヴィオはリュナの訴えを無下にできない。そしてまた、理性はなくなり、甘い蜜に浸され続けるような快楽に溺れ続ける。
「あぁ……っ」
また下腹部に紋様を刻まれた後では、横向きになって足を上げさせられる滑稽な格好でも、もう何とも思わなかった。むしろ挿入している彼の性器がら当たったことない場所に当たる。その刺激に悶えている間に首筋にキスを落とされる。
舌で肌を舐められる時のぬるぬるした感覚が気持ちいい。吸われるとちりっとした痛みが走って体が震える。噛まれて感じるのは痛みではなく今している行為の実感。されること全てが体をぐずぐずに溶かしていく。
「いいっ、そこっ、あんっ」
あちこちをまさぐるように触られる。中も外も、触れられるだけで感じる。彼は全身を性感帯にしようといているらしかった。
「あぁあぁぁっ」
うしろから手を回して、しなだれていた性器に触れる。何回か果てた後、もう勃起しなくなっていた。代わりに後ろを突かれる度にだらだらと透明な液体を零す。
「……可愛い」
「んんっ……」
一言囁かれただけで、また精液も出さずに達した。なのにとまらずずっと同じところを突かれ続ける。
「は、ぁ……っ」
頭まで溶けそうに熱くなって、もうどのくらい繋がっていたのかも分からなくなって。また突かれると、一瞬、内奥だと思っていたところが蕩けるように緩んだ。
「あぁっ!」
「奥まで挿っちゃった。びっくりしちゃったよね」
「あ……、ぅ……」
何も分からないうちの何度も出し入れされる。体から力が抜けてへたりこみそうになる。でも脚を持つ彼がそれを許してくれない。
「……やぁ……も、むり……あぁっ」
「大丈夫。好きな子にひどいことはしない。怖いことも、もう何もないよ」
好き。行為の最中、彼は隙あらばその言葉を吐く。何回言ったのか、きりがないので数えてもいない。ただその言葉を聞く度に、脳も体も甘い蜜の中にずぶずぶと浸されていくように思う。そして体は正直に反応し、何度でも中をうねらせる。
意識を失う前に思う。
ずっと考えることを避けていた。
なんで彼はこんな自分を好きになったんだろう。
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