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第74話 生命体
リュナはベッドの上でゆっくりと体を起こす。何の痛みも重みもなかったことを不思議に思った。ずっと、粘ついた何かに乗られていた、覆われていた感覚が会ったのに。あのまま全身を覆われ続け、何も知らないままに溶けていけたら幸せだろう。そう考えるほど気持ちがよかった。
リュナは辺りを見回し、そして悲鳴を上げそうになった。倒れていた。ヴィオが。違う。化け物が。それも半分正解といったところか。倒れていたのは、半分が彼で、もう半分がずっと探していた化け物だった。なんだろう、この生命体は。
「あー……リュナ、もう起きたの……」
肉塊と触手を足して二でわったような体の半分を、おそらく魔法科何かで人の形に変えていく。焦げていくような蒸発していくような音がした。しかしその体は人間になりきること無く、顔と肩までで止まった。腕と足はぶにぶにとした形状のままだ。立つどころか起き上がることも叶わず突っ伏している。
「何が……なんで、こんな……」
リュナは彼に犯されている間、夢を見ていた。ずっと探していた、自分だけの味方だった化け物に犯される夢を。どこからが夢でどこからが現実だったのか、まだ理解できてない。
「思いっきり食らっちゃった。聖水ってアイテム、よく効くんだね」
記憶は朧気でも、彼になんらかの危害が加えられたことだけはその一言で分かった。
棚に置いてあるものは、勇気さえ出せば誰でも持ってこられる。だけど聖水なんて、自分が取りに行っていた時は一回も置かれていることがなかった。
あれは、主人公が化け物を屈服させる時に手に入れる代物だ。
「持っていたのを、取られたのか……?」
「まさか。おれは聖水をかけられる側。あれが使えるのは、主人公になる人間だけ」
「主人公はアンタのはずじゃ……」
だって急に出てきて、その上存在感があった。しかしヴィオはメインの登場人物でもない。自分にも知らないキャラがいたのか。企画書には記載されていなかった……おそらく開発中に彼が追加したキャラ……彼って、誰だ……?
「主人公はセスだよ」
ゲームの主人公はビジュアルがはっきりと描かれていなかった。だからヴィオが言ってることが本当かどうかは分からない。
「セスはね、本来、右手に魔力を宿すんだ。だから切った。そうじゃないやつは、適当に傷つけるだけで、あんな風には襲わなかったでしょ。……でもケリーは襲っとくべきだったなって思ったから、あの後、おれだけでやっちゃった」
「どうして……そこまで……」
「おれね、ずっとあの地下から、この建物から出たかった。出してくれる人を探してた。でもリュナを見た途端、全部どうでもよくなったよ。愛すべくして愛したって感じがした。リュナとずっとここで一緒に居られるなら、それがいいって思ったんだ」
喋るだけ喋ってから、ヴィオは「もう限界……」と呟いて目を閉じた。
よろめきながら慌てて近寄る。口元に手を当てると、かろうじて息をしていた。それならきっと、体を治癒するための休息に入ったのだろう。
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