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第75話 治療
ヴィオの体は一向によくならなかった。
犯され抱き潰されることもないから、頭は妙に冴えたままだ。かといって、倒れているだけのような彼と無言で一緒にいる気は無い。人なのかどうかはともかく、怪我人がすぐそばにいるのにベッドを占領する気もない。
だからリュナは食料を取りに行く役に徹することにした。夜中にこっそりと、しかしリュナが出歩いていても、誰もが見て見ぬふりをするから、あまり関係はなかった。ふたり分の食料くらい、簡単に取ってこれる。
それから、基本的な手当もしておいた。ヴィオの怪我の部類はよく分からなかったから、とりあえず火傷の方法で行う。冷やした後に、成分のよく分からないこの世界の軟膏を塗って処置した。
「慣れてるね」
「……別に」
狭い部屋で、会話は長く続かない。
ヴィオの正体は分かった。もう遠ざける必要も痛めつける必要も無い。実際に理性がなかった時はあんなに好き好き言い合ってた。このまましれっと互いに「唯一無二の存在」になることもできるだろう。
しかし、自分が彼にしたことを考えれば、とうてい許されることじゃない。好きと許せないが同等に存在していたっておかしくない。自分が家族に対してそうだったように。
「痛……っ」
「大丈夫!?」
前世を思い出しても、前と変わらず頭が痛む。そしてその様子を見ると、心配からかヴィオは無理に起き上がろうとする。
「問題ないから」
今の彼の体では魔法を使うことすら難しい。つまりお互いに何もできることは無い。なのに起き上がろうとして、それもできない彼を見て、胸が痛んだ。胸の奥だけじゃなくて、むしろこれは……
「……っ」
シャツの胸元部分が、じんわりと湿っていく。彼に犯されていた時も、胸の先は舐め取られていたんだろうか。あの時は理性も感情も壊れていて、記憶にない。彼が美味しいと言って舐めとっていたのはいつだったっけ。
「……ねぇ」
「なんのためにいるの?」と、過去の記憶で姉にそう詰られていたことを思い出す。
こっちの世界にいるリュナとしての自分は、静和ほど鈍臭くもないようだ。
「どうすれば、あんたは元気になるの?」
「じゃあ膝枕してよ」
即答だった。
そういうことを聞きたかったわけじゃないし、そんなことしたいわけでもない。ふざけてるのか?でも、仮病を使えるほど元気にも見えないのだから仕方ない。
「えへへ、役得」
「どこでそんな言葉覚えてきの」
少なくとも、リュナは教えた覚えも独り言で呟いた記憶もない。
仕方なくベッドの上に座る。彼が頭を乗せていた枕を退けて、かわりに自分の膝を滑り込ませる。
彼が自分の体を見上げる形になる。
「やっぱりだめ……っ」
やめようとする前に気づかれてしまった。
「ひぁ……っ」
彼が手を伸ばして胸に触れる。先端を指で転がすようにされれば、すぐさま母乳らしきものが溢れ出しシャツを濡らした。肌にじっとりと張りついて気持ち悪い。仕方なしにボタンを外すと、先ほどより無遠慮に弄ってくる。
「ん……っ」
摘んだり引っ掻いたりされると、ぷっくり膨らんだ先端からまた液体が染み出ていく。すると今度は絞るようにぎゅっと抓られた。
その甘いような苦しいような刺激が耐え難くて、逃げたいのに、膝に彼の頭を載せているから逃げられない。
「あ、ぅ……あぁっ」
体は快感を逃す場所がないと知ると、浅ましくも背を丸まらせた。ぬるりと熱を持った刺激が欲しい。吸って欲しいと、ぴんと尖った乳首を彼の前に持ってくる。
「これさ、おれが触ったから出始めたわけじゃないよね」
「んんっ」
吹きかかる吐息がくすぐったい。
「もしかして、さっき言ってた元気になる方法って、これのこと?」
「い、言ってない、そんなこと……!」
「そう?じゃあこれ、おれは飲んじゃだめなの」
「やぁ……っ」
応えられないのは、口を開けば甘ったるい声でしか鳴けないと分かっているから。この瞬間、ほとんど触られていなくてもそこは熱を持って腫れ上がり、じんじんと疼いている。
「理屈にはかなってるんだよね。もともと、おれ達みたいな化け物を育てるための栄養が入ってるわけだし。聖水の火傷に効くかは分からないけど」
そんな考えを呟かれても、別のところに気を取られて頭に入ってこない。わざとかどうかはともかく、これ以上焦らされるのは耐え難かった。
「ん……ぅ……」
手で胸を寄せる。男だから谷間ができるはずも無いが、母乳を出すためか張ったそこはふっくらとしていた。
「……はやく、すって。飲んで……っ」
もう覆い被さるように上半身を折る。彼の顔は見えない。何をしようとしているのかも。けれどおねだりをした瞬間、ぬるりと舌が乳首にまとわりつくのを感じた。
「あんっ」
片方を舐められ、片方を指で弄ばれる。そこから出た体液を飲み下す音がする。彼は絶対安静で、動かしちゃいけないのに、腰が揺れるのを止められない。
「おいしい……全部食べちゃいたい」
「あ、あぁ……っ」
乳輪に歯を立てられる。それだけで達してしまい、じわっと下着の濡れる感覚があった。膝の上に頭を乗せていたら、こっちの体に何が起こっているのかもバレているわけで。タイミングよく胸先から唇を離す。
自分だけが体を震わせて、吐く息も熱いままで。そんな沈黙をかき消すように、明るく彼は言う。
「食べたいって思えるようになれば大丈夫だと思う」
何の根拠もないのに。機嫌が良さそうだった。いかされたのは自分だけなのに。
いたたまれなくなって視線をそらす。逸らした先で、半分勃ち上がっているのが見えた。
「……え」
それに手を伸ばしたのは、半分は無意識だった。もう半分は、自分だけされる側でいてたまるかという意地。ずっと蹴落とす相手だと思っていたから、今さら素直になれるはずもない。だから黙って握った。
生まれ変わってもそれほど手先は器用じゃなかった。下着ごとずらしてそこを握るのに少しだけもたつく。しかも、手を伸ばすにはまた屈む必要がある。
「ん……っ」
胸を吸われている間に、指で性器の輪郭を確かめるようになぞる。人差し指と親指で輪を作りゆっくり上下に扱く。
「まだ吸っていいの?」
無視。というか答えられなかった。これ以上余計なことを口走りたくなかったし、少しでも気がそれれば手の方がおろそかになってしまいそうだから。
「ん……っ、あ、はぁ……」
互いの体を貪り合っているような体勢になる。以前のように一方的に魔法を掛けられて甘やかされるだけなら言い訳のしようがあったのに。これではお互いに愛撫し合って、お互いに甘やかし合っているようなものだった。
しかも体はその先を覚えている。期待して、後ろがひくついているのがわかる。
「挿れたいけどできないんだよね。上手く起き上がれないし」
残念みたいに、ため息を吐きながら言うな。全部見透かされているみたいで嫌になってくる。
「……なら、僕がやる」
彼の頭の下から膝を抜く。怪我に障ることのないようにそっとだ。そして自分から乗るにしても、彼の腹に手をつける訳にはいかないから。手を後ろについて腰を突き出す形になる。
想像以上にすんなりと挿った。自分からそこをあてがい腰を沈めるような経験はない。だから少しは戸惑うことを予想していたけど、体は待っていたとばかりに彼の性器を呑み込んでいく。
「あ……ぁ、ん……っ」
自分のペースで、ゆっくりと食むように内へおさめていく。だから理性が飛んでいた時より、彼の形がはっきりと分かる。
「は、ぁ……っ」
奥まで咥えこんでから、ゆっくりと腰を動かす。前後上下、気持ちいいところを探している間に、さっき吐精したばかりの性器が勃ち上がって揺れた。
こんな自分の、みっともない格好なのに、彼は夢中になって見入っている。
「あ、ん……ぁ、あぁ……っ」
それだけで達してしまいそうなほど気持ちいいのに、彼はろくに動かない手を持ち上げて触ろうとしてくる。
「だめ、起き上がっちゃ……!」
「でも、そしたらちゃんと回復できるかもしれないし」
ああ言えばこう言う。ほんとにクソガキじゃないか。
――――でもその頃の俺、クソガキだよ?
いつだったか、彼が言っていたことを思い出す。
似てるのかな。思い出そうとする前に、いいところが自重で押しつぶされ、開いた唇から喘ぎが漏れた。
ここはふたりで作り上げた世界。僕が作って、彼が残酷なものに書き換えた世界。
その中で、彼の魂みたいなものが、ほんの少しでも、欠片だけでも入っていたらいい。死に際に、自分が彼へ癒えない傷を刻み込もうとしたように。彼も僕の世界に入ってこようとしたんだと。そうすればまだ、この世界にいてもいいような気がした。
「あ、こら……!」
だめだと叩き落としてもまた触れようとするから仕方ない。
「全部っ、僕がする……からぁ……っ」
体を屈めてすっぽりと彼を覆う。その分体重がかかってしまうけど、無理やり起き上がられるよりは体の負担も少ない気がする。
「ほら……っ」
好きだけ吸えばいい。
そう言い切る前に、また舌が胸を這う。しばらくはくっつくだけでいいと思っていたのに、腰を浮かされ揺さぶられる。
「あっ、ん、ぁ……っ!」
このままではすぐ達してしまう。何かにすがりつきたくて、彼を思い切り抱きしめる。嬉しそうに背中に持ち上がらないはずの手が回された。
「あっ、あぁ、やぁっ」
どうなってるのか見えないが、腕を枝分かれして触手にしたらしい。尾てい骨を這っただけで声が震える。細い触手が前にやってきて鈴口を弄っただけで中のものを締め付ける。
「んんんんっ」
最後には太いそれが口の中を蹂躙した。最初の方口に突っ込まれたことを思い出す。あれは彼なりのキスだったのかもしれない。乱暴にも程がすぎるが。
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