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第76話 飼われる

「意外と効くんだ、あれ」 ヴィオは目を丸くしながら、形成できた手を閉じたり開いたりしている。日が経つにつれて、また人間の形も取れるようになってきた。皮膚にはまだ爛れた痕が残っているけれど。ベッドの上で、「やっとちゃんと抱きしめられる」と、嬉しそうに後ろから手を回してくる。 この様子なら、今日もまた壊してもらえる。しかし、その前に言っておかなければいけないこともある。 「……前、思ってたことを思い出した」 リュナではなく、吉永静和だった頃の話だ。 「なに?」 ヴィオは頬を擦り寄せながら続きを促す。 「もしこんな自分が誰かに愛されることができたら……きっと何でもする」 「おれにも?怯えてたのに?」 責めるというよりは、確認する口調だった。そして声には期待も滲んでいる。ヴィオはきっと、自分と甘ったるい関係になることを望んでいる。 その期待には、決して応えられないけれど。 「正体が分かったからというのは、やっぱり都合がよすぎるよ」 それに、自分とヴィオではやはり違いすぎる。彼が施設の罪人をまとめるようになったら、また劣等感を刺激されてしまうだろう。 だから、また魔法で壊されでもしない限り、恋人のように甘え合うことはない。 そうはっきり告げたら、ヴィオは傷ついた顔をした。そしてその表情を見て、優越感を覚える自分。きっと、こんな感情を覚えている限り、自分たちは恋人にはなれない。 「僕はたぶん、ヴィオのような形で人を好きにはならないし、なれないよ」 でも、愛しく思う気持ちなら分かる。 「だから、かわりにこんな自分をあんたに差し出すことにした。……本当に、僕のことは好きにしていい」 この部屋を出ていくこともできる。出て行ったって居場所もなく、今さら主人公になりたいという野望が叶うとは思えない。だったら彼が養分にでも苗床にでもなる道を選ぼうと思う。そしていつか、主人公が力づくで押さえつけに来たら、ヴィオと一緒に退治されてやろう。 「じゃあ、今度はおれがリュナを飼う番だね」 おれがご飯を持ってきてあげる。その代わり、おれの手で壊れてくれる? いつかリュナが言った言葉に似た条件を彼は口にする。 「えへへ、おれのことペットって言ってたお返し」 そういえば、朦朧とした意識の中でそんなことを口走った気がする。 「これも、唯一無二の関係なのかなぁ」 甘ったるい声で、ヴィオはそんな風に呟いた。

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