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第18話 隣の彼が、俺の“推し配信者”説

今日はテレビドラマの収録が長引いて、俺はくたくたになって帰宅した。 「……はぁ、疲れた」 玄関で靴を脱ぎ捨てて、そのままソファーにばたりと倒れ込む。 今日は朝からずっと立ちっぱなしで、NGも何度か出して……監督の呆れた顔が脳裏をよぎる。 「……反省」 お決まりのようにスマホを手に取って、配信予定を確認する。 ――リョウの配信、今日はなし。 「そっか……」 少し残念。でも今はそれより、頭から離れないのはあの疑惑。 リョウ=涼太くん説。 前回の配信で見えたぬいぐるみ。 あれは、涼太くんの部屋で見たのと全く同じ。 声だって、よくよく思い返せば……似てる。いや――同じだろ、あれは。 「……もう確定じゃん」 そう思ったら、居ても立ってもいられなくなった。 確かめたい。でも、どうやって?  まさか直接“涼太くんって、ライブ配信してるよね?”なんて聞けるわけがない。それに、内容も内容だし。 「……んー、でもさ」 ふと、妙案が浮かぶ。 ――涼太くんの部屋に行けばいい。なんとか理由をつけて。 そうすれば、もっと確証が得られるかもしれない。 「よし」 立ち上がって、鏡で自分の顔をチェック。少し疲れてるけど、まあ大丈夫だろう。 軽く髪を直して、隣の部屋へ向かった。 インターホンを押すと、すぐに返事が返ってきた。 「はーい」 ドアが開いて現れたのは、部屋着のシャツにスウェットという気楽な格好の涼太くん。 髪は少し乱れていて、なんだか無防備。 この人が“リョウ”だったら――。 「瑞樹? どうした?」 「あ、ごめん。醤油切らしちゃってさ。借りられる?」 嘘だ。醤油なんて冷蔵庫に半分残ってる。 「醤油? いいよ。瑞樹が自炊なんて珍しいじゃん。ちょっと待っててな」 にこにこと奥へ引っ込む涼太くん。その隙に俺は――部屋をちらり。 ……あった。ベッドの上に、例のぬいぐるみ。 やっぱり。 「はい、どうぞ」 「ありがと。……あのさ、涼太くん」 受け取って、少し間を置いて切り出す。 「うん?」 「今日、仕事で疲れちゃってさ。肩とか背中がバキバキなんだよね」 「え、大丈夫なの? 無理してない?」 涼太くんが心配そうに眉を寄せる。その表情がまた可愛くて、思わずドキッとする。 「うん、まあ。でも、俺、マッサージ得意なんだよね。疲れが取れるやつ」 「へえ、すごいな」 「涼太くんも疲れてるんじゃない? よかったら、やってあげようか?」 「え……っ」 涼太くんが目を泳がせる。 「お、俺に!? いやいや、大丈夫! 瑞樹のほうが疲れてるだろ」 「遠慮しないでって。醤油借りたお礼」 「そ、それは理由になってないから!」 おお、慌ててる。この反応、めちゃくちゃ面白い。 「……もしかして、触られるの嫌?」 「そ、そういうわけじゃないけどっ!」 慌てて否定してくる。その様子があまりにも可愛くて、俺はニヤリと笑った。 「じゃあ、決まりね」 「ちょ、ちょっと待って――!」 言葉を遮って、俺は自然な顔で彼の部屋に足を踏み入れた。

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