24 / 35
第24話 恋とファンの境界線、もうわかんない。
「涼太くん、緊張してるの? 配信ではあんなにえっちなのに?」
そう言われて、瑞樹の顔を見ればまた恥ずかしくなって目を逸らしてしまった。
「それはそれ……」
思わず反論すると、瑞樹は俺の顎を軽く持ち上げる。
「いや、同じだよ」
「……だって仕方ないだろ。初めてだし!」
「え? 初めてって……」
「だ、だから……誰かとこういうことするの、初めてなんだよ!」
瑞樹が少しだけ驚いたように目を見開く。
「え……マジ?」
「当たり前だろ」
「……いや、それは、想定外……」
「なんだよ、27で経験なくて悪かったな」
「そうじゃない。悪くないよ、むしろ最高だし」
耳元で囁かれ、思わず手で顔を覆う。
「何言ってんだよ……」
「ん……涼太くん、顔赤いな」
くすぐったいくらい近い距離で、瑞樹の視線を感じる。
「……からかうなって」
ベッドの上で押さえられたまま、体が熱くなる。
逃げても、瑞樹の腕は絶妙にゆるまず、ほどよい圧力で止まる。
「逃げないで。見たいんだよ、涼太くんの顔」
ふっと視線を上げると、瑞樹は淡々としてるのに、どこか含みのある目で俺を見ている。
「イケメンが……近い……」
「何言ってんの。じゃあ、するよ?」
瑞樹は俺の唇にちゅっとキスをして――
「――って、待て待て待て!」
俺は慌てて瑞樹の顔を両手で押し返した。
「なんだよ急に」
「いや、なんだよじゃねぇよ。ちょっと待て、心の準備が……」
「心の準備? さっきからずっと時間あげてたけど」
「全然足りてねぇよ。つーか、俺が初めてだって今知ったよな!?」
「うん、だから優しくするって」
「優しくするとかそういう問題じゃなくて!」
俺が叫ぶと、瑞樹はきょとんとした顔をする。
「……涼太くん、もしかして本気で緊張してる?」
「当たり前だろ。27年間誰ともこんなことしたことねぇんだから……」
「でも配信では――」
「あれは一人だからできるんだよ、相手がいるのとは全然違う!」
俺は布団を引っ張って顔を隠した。
よりによって、瑞樹が相手だなんて。好きだから余計に恥ずかしすぎて、息まで止まりそうだ。
「……涼太くん?」
「もう無理、恥ずかしすぎる、帰ってくれ」
「帰らないよ」
瑞樹が布団をめくろうとするのを、俺は必死で抵抗する。
「やめろ、見るな!」
「何で隠れるの」
「だって、お前、人気俳優だろ? 絶対こういうの慣れてるだろ……」
「慣れてないよ」
「嘘つけ、さっきからの余裕顔見てたら分かるわ」
布団の中でもぞもぞしていると、急に瑞樹の重みを感じた。
「え、ちょっ――」
「逃がさない」
布団の上から抱きしめられて、身動きが取れなくなる。
「重い、どけ」
「嫌だ。涼太くん、このまま話そう」
「話すことなんかねぇよ」
「あるよ。例えば、俺が“ひゅーが”として送ったコメントで、どれが一番嬉しかった?」
「し、知るかよ……、つーかそういう話を今するな!」
「じゃあ、初配信の時に俺が送った投げ銭覚えてる?」
「……1万円のやつだろ」
「お、覚えてるんだ」
瑞樹の声が嬉しそうに弾んだ。
「あの時さ、涼太くんめっちゃ驚いてて、声裏返っててさ」
「う、うるさい……」
「可愛かったなぁ。あれで完全にハマった」
「やめろ、恥ずかしい」
布団の中で顔を覆っていると、瑞樹がぽんぽんと背中を叩いてくる。
「ねぇ、涼太くん」
「……なんだよ」
「配信のリョウも好きだけど、リアルの涼太くんも好き。むしろこっちの方が好きかも」
その言葉に、心臓がドクンと跳ねた。
ともだちにシェアしよう!

