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第三話 再び①
※スケベ延長戦です。がっつり喘ぎます。
冬の朝日が瞼をくすぐる。目を開ければ、七瀬の丸い頭が見える。顔を埋めて、息を吸う。昨晩は、知らないシャンプーのにおいだと思ったけれど、一晩明けてみると、紛れもなく七瀬の匂いがした。
これが幸せの匂いなのか。幸せの味なのか。幸せの温度に、幸せの弾力。幸せそのものを抱きしめている。
これを一度手放そうとした、過去の自分が信じられない。甘酸っぱい郷愁と、青春のほろ苦さが甦ってきて、うっかり涙が零れた。
七瀬の黒髪。白いうなじ。昔はよく噛み付いていた。キスできない代わりに、口寂しさを紛らわすために、噛み痕ばかりを残していた。七瀬にいくら言われても、その癖は抜けなかった。
そっと唇を這わせてみる。昨晩は、噛み痕なんか残す暇もなく、ただひたすらに唇を重ね、舌を絡ませていた。七瀬の首筋は、昨晩風呂を上がった時と何ら変わらず、白く滑らかなままだ。
後ろから抱きしめ、体をすり寄せる。甘く香る汗を嗅ぎながら、首筋に吸い付く。強めに吸って、舌先でなぞり、赤く丸い痕を残す。己のものだという証を、この体に刻み込む。そんな必要はないと分かっているけれど、どうしたって心は満たされた。
パジャマの襟を引っ張って緩め、露わになった肩にも吸い付いて痕を残す。上はパジャマを着ているが、下は下着しか履いていない。剥き出しの足を絡めて抱きしめる。兆しつつある自身が、七瀬の腰に密着する。
「……おい」
「……おはよ。起きちゃった?」
「起こされたんだ。このヘンタイ」
七瀬が身を捩り、肩越しに睨んでくるので、瞬介はその頬を掬い上げて、キスをした。初め、不服そうに唇を尖らせていた七瀬だが、瞬介が口づけを深めれば、嬉しそうに舌を絡めてくる。
朝っぱらから、目覚めの瞬間からこれだ。この男に、身も心も溺れていくようで、怖い。怖いくらいに、幸せだ。
「ッ……おい、瞬介……」
「ん~?」
「とぼけてんじゃ……」
「いいじゃんよ。昨日の続き。入らせて?」
「ばか、こんな……朝っぱらから……」
下着をずらせば、円やかな尻が露わになる。逃げる腰を抱き寄せて、瞬介は自身を突き立てた。切っ先が沈み込み、昨夜の名残か抵抗もなく、根元まですっかり埋まった。
「っ、はぁ~~……お前ン中、あったかくて、きもちーよ」
「ばっ、か……ん、ン……」
「その言い方、すげぇエロい。もっと言って」
「……ばか」
七瀬はぶるりと身を震わせる。瞬介を押し退けようとしていた手は、いつの間にか、甘えるように絡み付いていた。
「お前もさ、気持ちいいならいいって言って? 俺だけよくても、意味ねぇんだから」
「っ……」
七瀬は耳まで赤くして呟く。
「きっ……き、きもち、いい」
「うん。俺も。すげぇいい」
「きも、ちい……きもちいいっ……」
「かわい。好きだよ」
「ん……ッ」
耳たぶを甘噛みしながら囁けば、ナカが嬉しそうに絡み付いた。まだ軽く揺すぶっているだけなのに、この調子ではすぐにイッてしまいそうだ。
瞬介は、パジャマのボタンをいくつか外し、露わになった七瀬の薄い胸元に、手を滑り込ませた。指先で優しく弄りながら、充血して固くなった尖りを探る。指先に引っかかったそれを、優しく摘まんで、解して、捏ね回す。
「やっ、ん……あんま、さわんな……っ」
「なんでぇ? 気持ちいだろ?」
「きもちっ、けど……」
「だろ~? ここすると、ナカもすげぇ締まるもんな」
揶揄するように指摘してやると、七瀬は羞恥に打ち震えた。びくりと腰が跳ね、淫らな穴が収縮する。
「やっ、も……だまれ、ばか」
「だからなんでよ。かわいくて好きだっつってんの」
「ッ、せぇ……調子にのって……」
「そりゃ調子にも乗るだろ。昨日はお前に先越されちゃったし。だからお返し」
瞬介が腰を揺すれば、七瀬も応えるように腰をくねらす。やがて、七瀬の動きの方が、だんだん激しくなってくる。腰を引いては押し付けて、擦り付ける。瞬介がほとんど動かなくても、熱杭は自然と穴を押し広げ、最奥を捏ね上げる。七瀬は、快楽に身を捩りながら腰を振る。
布団の中、衣擦れの音と、マットレスの軋みに隠れて、いやらしい水音が響いていた。リズミカルに繰り返すそれらの音が、今まさに体を繋げているのだということを、明瞭に伝えてくる。
もう一度、キスをした。七瀬を振り向かせて、肩越しに唇を重ね、舌を絡める。少々無理のある姿勢ではあるが、七瀬は夢中でキスを貪る。そうして抱きしめて、濃厚なキスを送りながら、胸の尖りを弾いた。
ぐぐっと、七瀬の腰が弓なりに撓う。やがて、張り詰めた弦が切れるように、びくんと弾けた。蕩けた肉襞がねっとりと絡み付く。淫らな穴が痙攣して絡み付く。腰を小刻みに震わせながら、七瀬は甘く掠れた声を漏らす。
七瀬の下腹部を、手探りで確認する。思った通り、そこはまだ張り詰めたまま、だらしなく蜜を零して震えていた。軽く握って扱いてやると、七瀬はか細い悲鳴を上げる。逃げる腰を追いかけはせず、すぐに手を離した。
「次、上のってくんない?」
瞬介のおねだりを、七瀬はあっさりと聞き入れた。ゆっくりと体をもたげて、足を広げ、瞬介の上にまたがる。反り立つ熱塊に指を添えて、己の中へと導いていく。
「ッく、んン……っ」
きつく目を瞑り、喉を反らして、押し殺したような吐息を漏らす。衝撃を受け流すためか、胸を反って腰を沈める。
騎乗位なんて初めてだった。期待に震え、だらだらと涎を零す分身が、熱い泥濘に溶けていく。その光景を、うっかり鼻血が出そうになりながらも、瞬介はしかと目に焼き付けた。
「は、ァ……っ」
最後まで迎え入れ、七瀬は安堵にも似た息をついた。瞬介を見下ろして、うっとりと、しかし挑発的に、目を細める。
「次はてめぇを泣かしてやらァ」
「へ~ェ。そりゃあ、おっかねぇな」
ゆるりと腰を持ち上げては落とす。最奥を貫かないよう、僅かに腰を浮かしたまま、踊るように身をくねらせる。ぐちゅぐちゅと、胎内を掻き回す生々しい水音が、リズミカルに響く。他ならぬあの七瀬が、恥もプライドもかなぐり捨てて、この音を響かせているのだと思うと、目が回るほど興奮した。
浅ましくも大股を開いて瞬介の上へまたがっているせいで、濡れそぼった秘肉が露わになる。そのことを知ってか知らずか、七瀬は夢中で腰を振り立てる。淫裂に食い込む肉杭。花びらが捲れて吸い付いてくる。本人としては、必死に瞬介を責め立てているつもりなのだろう。唇を噛みしめて、快楽を前に必死に持ち堪えている。
「んっ、なに……見つめんな。穴が空くだろ……」
「そりゃ無理な相談ってやつだな。こんな絶景前にして、目ェ離してられっかよ」
七瀬が腰を揺する度、軽やかに翻るパジャマの裾を、瞬介はたくし上げた。期待に震え、蜜を零し、しとどに濡れそぼった七瀬の分身が露わになる。それから、程よく筋肉のついた腹部と、白く薄い胸。その先端に尖り立ち、快楽を主張している、二つの赤い突起。瞬介は、たくし上げた裾を、七瀬の口元へ近づける。
「噛んで」
七瀬は一瞬たじろいでから、「ヘンタイ」と呟いて笑い、差し出された布を口に咥えた。
「お前ね、この状況でそういうこと言うの、完全に逆効果だから。昔っからそーいうとこあんだよなぁ。そろそろ学んでくんね?」
「うぅせぇ」
一言文句を言い、七瀬は再び腰を踊らせる。足に力が入らなくなってきたのか、腰を振るというよりは、踊るように回転させる。切っ先が奥を優しく捏ねる、絶妙な力加減で腰を揺する。
「うわ~、すンげぇいい景色。目にしっかり焼き付けとかねぇと」
滑らかな太腿を撫でる。内腿から鼠径部へ、そして、濡れそぼった分身へと、指先を滑らせる。瞬介の指が触れる度、七瀬は敏感に身を震わせる。腹筋の引き攣れているのが分かる。
脇腹から腋の下、そして胸元へ。性感帯を的確に辿り、最後には、胸の尖りを優しく摘まむ。びくん、と柳腰が揺れる。濡れそぼった分身が、蜜を散らして悦んでいる。
「感じすぎ。俺を泣かすんじゃなかったっけ? 昔っから感じやすいんだから、あんま無茶すんなよ」
分かっていて、意地悪を言った。七瀬は、眦を鋭く尖らせる。この目が、瞬介は好きだった。
まだ、快楽に全てを委ねる前の、理性によって抗っている、瞳の色。瞬介のことだけを真っ直ぐに射抜く、強気な眼差し。理性という名の防壁を突き崩して、もっと甘く蕩けさせたい。全てを自分だけの色に染め上げてしまいたい。そんな、暴力的な衝動に駆られるのだ。
七瀬の細く括れた腰をがっしと掴み、下から思い切り突き上げた。いきなり激しく突き上げられ、「あっっ」と声を上げる間もなく、しとどに濡れた性器から、ほとんど透明に近い精液が噴き出した。
果てたというのは一目で分かる。噴き上げた精液が、腹筋の窪みに溜まっている。胸元にまで飛んでいる。七瀬が荒く息を切らし、唾液の滲みた布地がはらりと舞い落ち──それを待たずに、瞬介は再び腰を突き上げた。
「や゛ッ、あ゛、てめっ、急に……!」
「悪りぃけど、泣かされるより泣かしたい派なんだよね。奉仕されるよりしたい派だしぃ、イかされるよりイかしたいの。分かる?」
「わかッ、んん゛、やめっ、はげしッッ……!」
抗う隙もなく揺さぶられる。強制的に快楽を送られる。こうなってしまうと、たくし上げた裾を噛んで、快楽を堪えながら腰を振るなどという器用な芸当は、もはやできない。みるみるうちに、理性が蕩ける。甘い嬌声を引っ切りなしに響かせて、素直に快楽を訴える。
「やァ゛、あ゛、今イッ……イッた、いったからぁ゛、とまれって……!」
「はーい、ちょっと腕上げてね」
「や゛っ、ンン゛…っ、はなしきけ、ばかッ!」
ボタンを外し、邪魔な布を取り除く。着たままするのも好きだが、最後には互いに素っ裸だ。生の肌の触れ合いが一番心地いい。
「はァ゛、あ゛…、おくっ、だめぇ、どすどすすんなっ」
「どすどすって? こーいうの?」
「あ゛ッ、や゛ぅ……ッ、また、ァ゛────ッッ」
とぷりとぷりと、透明な精液が溢れ出る。瞬介の腹筋を温かく濡らす。
最奥まで貫いて、限界まで引き抜いて、再び奥まで突き上げる。容赦なく繰り返される律動と、次第に深くなる挿入。生々しい打擲音が響く度に、蜜が散る。涙が散る。滑らかな黒髪が翻る。
壊れた蛇口のように、我慢汁とも精液ともつかない粘液を垂れ流す性器を、七瀬は瞬介の腹部へ擦り付ける。おそらく無自覚に、己の快楽を追いかけながら、いやいやと首を振っては泣きじゃくる。
双丘を掴む指先が食い込んだ。激しい突き上げに応えるように、これもおそらく無自覚ではあろうが、七瀬も腰を弾ませた。
弓なりに反った薄い胸。先端に揺れる桃色が、どう控えめに見積もってもおいしそうで、舌の上に唾液が溢れた。抱き寄せて、しゃぶり付く。
「ひゃ、ッん゛……! すう、なッ……かんじゃ、や……っ」
性感帯同士、神経が絡み合っているのだろうか。乳首を刺激すると、応えるように胎内がうねる。
つんと尖り立った乳首に歯を立て、舌を這わせてしゃぶりながら、瞬介はぐるりと体を反転させ、七瀬をベッドに沈めた。期待に潤んだ瞳が見上げる。唇にちろりと覗いた舌が、誘うように艶めいている。
迷うことなく、噛み付いた。唇を奪い、舌先を触れ、深く絡める。唾液を絡めて、舐めて吸って、溢れる吐息ごと深く呑み込む。
「ッ、んんン゛ッ────ッッ!!」
何度目か分からない絶頂へと昇り詰める。抱きしめた体が、悦びに打ち震える。それをきつく押さえ込み、再び奥へと挿し込んでいく。力なくシーツの海を這って逃げようとする腰を抱き寄せる。
「やぇ゛ッ、もっ……こわ、れ……けつ、こわれっ、こわれちまう……!」
「いいじゃん。俺がいくらでも治してやんよ」
「よく、にゃッ……あア゛、や゛、おかしく、なッ……いかれちまう……ッッ!」
「大丈夫だって。いっぱい感じてよ。ちゃんと抱きしめててやるから。俺の腕ン中でイけ」
「ッッ……あ゛ァ……」
過去にも似たような会話をしたなと、瞬介はぼんやりと霞む頭で思った。七瀬は覚えているだろうか。あの日言えなかったこと。できなかったこと。今なら何だってできる。瞬介のしたいこと、七瀬の求めるもの、何だって。
「ぅ゛、い゛ッ……おれもう、イ、イク、いく……っ」
「俺も。ナカ出していい? 一緒にイこーな」
「はッ、ア゛、なんか出、でっ、でちま、でちまうぅッ」
「ん。全部見せて。七瀬のイクとこも、感じてるとこも、全部な」
「ひぅ゛、イ゛っ……あ゛ッ、ぃ゛、いぐ、い゛ッ……やァ゛、や゛ッ、しゅンすけぇ゛っ、やらぁ゛──ッッ」
快楽の泥濘に溺れ、理性なんてもう欠片も残っていないという風に乱れながらも、健気に名前を呼んでくれる。縋るように伸ばされた掌を握りしめ、指を絡めた。反対の手で、のた打ち回って悶え狂う肢体をしっかり抱きしめる。
「い゛、あ゛ッ、ア゛、あア゛ッッ────!!」
「っ、ぐ……ッッ」
ほとんど同時に、絶頂へと駆け上がった。甘い蜜が降り注ぐ。迸りが空洞を満たす。瞬介は低く唸りながら、七瀬の唇に食らい付いた。
「ぃ゛、ぅ゛……ん゛……ンン゛……ッ!」
深く長い絶頂だった。口の端に漏れる七瀬の喘ぎを、瞬介は舌を伸ばして舐め取った。それでもまだ、足りない気がして、柔く蕩けた口腔内を、火照った舌で掻き回す。七瀬も舌を絡めてくれる。舌先が痙攣していた。瞬介の舌も甘く痺れて、それもまた、七瀬の味のように感じた。
「ッ、ふ……ん、ン゛ぅ……っ」
唇を離し、濃厚な糸が引く。体を離せば、やはり濃厚な糸が引く。引き攣れて疼く蕾と、脱力しきった肉茎とを、濃密に繋いで切れない。
七瀬は、悦びの声を漏らしながら、全身を小刻みに震わせる。今まだイッているのか、余韻に浸っているのかは、傍目には分からない。ただ、快楽の只中を揺蕩うように、カクカクと揺れる迎え腰が恐ろしく淫靡で、まだあともう一回、もう少しだけ繋がりたいと、いけない考えが頭を過った。
とはいえ、さすがにこれ以上は……と、幾分取り戻した理性が訴える。昨晩だって、どろどろになるまでしたのに、今朝また、ぐちゃぐちゃになるまで交わってしまった。七瀬の噴いた潮は床にまで飛び散っているし、汗や精液を吸ったシーツは変色している。これ以上の無体を強いて、十年越しに心の通じ合った恋人に本気で怒られるようなことになるのは避けたい。
そんなわけで、渋々と後始末を始めると、ベッドに沈み震えていた七瀬と目が合った。汗で張り付いた前髪の隙間に覗く双眸が、ご機嫌に細められる。
「……あんだよ?」
「なんでもねぇよ」
「あっそ」
「瞬介」
「だからなに!」
甘えた声で呼ぶものだから、つい手を止めて、七瀬の顔を覗き込む。やはり満足そうに微笑んで、瞬介を見つめてくる。
「なぁ」
「何よ」
「気持ちよかったぜ」
「……そりゃー、潮噴くくらいイキ狂ってたもんな」
「好き」
「っ……」
「お前も、お前とすんのも」
「……」
真っ直ぐに瞬介を見つめて、嬉しそうに笑って、七瀬は恥ずかしげもなく言う。かわいい、好き、と叫び出したいのをぐっと堪えて、瞬介は顔を近づけた。瞬介の影が七瀬を覆う。
「俺だって、お前も、お前とすんのも、すげぇ好き」
「ん」
「気持ちいし、それに……」
愛しているから。心まで深く繋がれるから。けれども、それを言う前に、唇が重なった。七瀬が甘えるように唇を尖らせるから、抗えなかった。抗う必要もなかった。首筋に絡む指先が、燃えるように熱い。瞬介の指先もまた、炎より熱く火照っていた。
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