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第6話 怒り×マフラー 1
おまけ。祐視点。
×××
ジャ──ッ
フェイスタオルを濡らして絞り、そっと頬に当てる。
熱が引き、腫れぼったい感じも無くなってきたとはいえ、まだ酷い顔をしている感覚はある。
喧嘩なら、兄貴の見よう見まねでそれなりに強かった。でも、兄貴がblack-Fairiesの三代目総長になったと知った母が、陰で泣いているのを偶然見掛けてしまった俺は、俺の中にある大切な何かが抉れるような痛みを感じた。
中学でピアスを外し、黒髪の真面目キャラに変わってから、俺は売られた喧嘩を買う事はなかった。
もし、あのまま兄貴の後を追い掛け続けていたら……そう責めながらも、真面目キャラを貫いたからこそ柚と出会えて仲良くなれたのだと思うと、この感情を何処にぶつければいいのか解らなかった。
……やっぱ、ぶっ壊してくれば良かった。
柚を背負って倉庫から出た時に見掛けた、総長 のバイク。
あれは代々受け継がれたもので。三代目の兄貴がマフラーを直してまでその伝統を守り抜いたものだと思ったら、それを一時の感情で踏み躙る事など出来なかった。
カタン、
洗面所から姿を現す柚。
対面キッチンに立つ俺と目が合い、怖ず怖ずとリビングに入ってくる。
「……ごめん。顔、キモいよな」
タオルで冷やしている顔を背けながら、リビングへと戻る。
ぶかぶかの部屋着。
丸襟から伸びる細い首筋には、生々しい印の数々。
あの玲音って野郎が柚に手を出そうとしている噂を耳にしてから、髪を染め、玲音の下にいるblack-Fairiesの奴らと接触して仲良くなってたってのに。
……俺は結局、誰も助けられないのか?
憤りを感じながら、ソファの真ん中にドカリと座る。
「そんなこと、ないよ……」
柚の震える声。
それに引っ張られて顔を上げれば、服の裾をぎゅっと掴む柚の手が、髪の毛先が、震えているのに気付く。
「となり……座っても、いい?」
「……どうぞ」
腰を浮かせて端に避ければ、風呂上がりの肌の匂いがふわりと鼻腔を擽る。
途端に、高鳴る鼓動。
「痛い?」
「……いや、平気」
痛々しそうな顔をしながら、俺の顔を覗き込む柚。
傷ついて痛いのは、柚の方なのに。
よく見れば、今にも溢れ落ちそうな程、柚の瞳が涙で潤んでいる。
「怖い、か?」
「……ううん、違うの」
慌てて涙を指先で拭う柚が、愛おしい。
「嬉しくて──こんな汚れた僕に、優しくしてくれて。
祐が何にも、変わってなかったんだって、解ったから」
「……」
「あのね。祐が突然、髪色を変えて。不良の人達と一緒にいる姿を見てから……祐が離れていっちゃったみたいで、淋しかった」
そう吐露する柚が、無理したように微笑む。
「だから、──っ、!」
胸の奥にある大切なものを、握り潰されるように痛くて。
堪らず柚の身体を引き寄せ、強く抱き締める。
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