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第7話 ソーダアイス
「焦った……」
同行人が巨人化したため、自転車は押す。乗って逃げたかったが、あの様子では追いかけてこないだろう。ミチは俺の斜め後ろを歩く。
「自動車にも乗ってみたいんだが、持ってないのか?」
「免許は持ってないなー」
途中、精神的に疲れた俺は小川で小休止を挟んだ。アイスの袋を破く。ちらりと来た道に目を遣るが、誰も追いかけてきてはいなかった。肩の力を抜く。
自転車にもたれ、ミチが小川で遊んでいるのを眺める。
「ミチの種族って、何人くらいいるの? 人間くらい?」
「五百。今はもっと増えてるかも知れんがな」
川底の石を拾っては遠くに投げている。
「五百⁉」
少ないのか、俺たち人類が多いのか。
「どんな星からきたわけ?」
「ほとり。何食べてるんだ?」
「ん」
……。なんだか、露骨に話題を逸らされたような。
それとも、食べ物への興味が出てきただけか。
「アイス。うまいよ? 舐めてみる?」
棒にささったソーダ色の長方形を傾け、差し出す。
水を蹴って近寄ってきたミチはアイスを素通りした。
「は?」
俺の唇に吸いつく。
「……」
水が流れ、遠くで小鳥の鳴き声がする。
ミチは唇を離した。
「……ふん。思ったより甘いんだな。水色だったから、海の味がするのかと思ったが」
不満そうに唇を舐めると、また小川に戻って行く。
とけたアイスが、俺の指を濡らす。
ミチの唇は、この世界には無い鉱石っぽい味がした。
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