29 / 64

第29話 赤髪編  人質

♢ 「家に、帰してください」 「ごめんなー? もうちょいゆっくりしてってよ」  天蓋付きのベッドの上。俺は両手両足を縛られている。両手は腹の上。  体重をかけないように、赤髪の男が跨ってきた。  上等なスーツに身を包み、胸元をガバガバに開けている。ミチとは違う方向の美男で、細めの目が愉しげに笑っていた。  暗い室内に、間接照明が一つだけ。ほのかなオレンジの明かりが沈黙しているシャンデリアに反射し、装飾の宝石を煌めかせる。  白手袋に包まれた手が、首筋を撫でてきた。 「ぁ……」 「もう喋れそうだね。俺とお話ししよう」 「なん、ですか?」  赤髪は俺の横にごろりと転がる。 「君さ、知り合いに宇宙人とか、いない? いるでしょ?」  思わず瞳が凍り付いた。男はニヤリと笑う。俺の反応は、肯定したも同然だった。 「なん、で……」 「あはは。俺さぁ、宇宙人や宇宙生物をコレクションするのが趣味でね。ニュースであの映像を見て、急いで情報を集めてたんだ」 「コレクション、って……?」 「見たい? 見せてあげようか」  子どものようにはしゃいでいるが、俺のテンションは上がらなかった。人間に捕まるような宇宙人では感激できない。そりゃ宇宙生物全てが、ミチのように強いわけではないだろうけど。 「いえ。大丈夫です」 「あっれー? 興味ない? つまねぇなー」  起き上がると彼は、胸ポケットから一枚の写真を取り出す。  そこには、円盤と俺とミチが映っていた。 「それは……」  俺が円盤を見に行った時のものだ。  赤髪はその写真にキスする。 「仲、良さそうだね。君の宇宙生物は強そうだから、人質が必要と思ってね。君を痛めつけたら、大人しく捕まってくれるかな? この銀髪くん」  ズボンのボタンを外され、チャックを下げられた。 「あ、何を!」  逃げ出したいのに、頭が重くてうまく身体が動かせない。 「今から、どんなことされると思う?」 「……や、め」  怖くて、目を逸らすこともできなかった。

ともだちにシェアしよう!