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第32話 赤髪編 傀儡人形
「止まれっ」
「ここは立ち入り禁ッ⁉」
サングラス男たちを扉ごとぶち抜く。へし折れた扉は室内の壁に突き刺さる。
黒服の男たちを踏みつけて、薄暗い室内に入り込んだ。
「邪魔するぞ」
ほとりが連れて行かれた場所を訊き出した後、フルフェイスヘルメット男は川に流しておいた。川に洗濯にきたおばあさんあたりが拾ってくれるだろう。
ルンバさんは同行しようかと言ってくれたが断った。地震や噴火よりも、主がキレた方が手に負えん。
広くない室内では赤髪の男が酒を呷っていた。長い足を組み、ファーのついたコートを羽織っている。
「いらっしゃい。頭吹き飛ぶかと思ったよ」
赤髪の男の肩より長い髪の毛が数本落ちている。吹き飛ばした扉が掠ったのだ。直撃すれば良かったのに。
その隣には、ほとりが腰かけていた。
「ほとり……。ほとり!」
女を侍らすように、赤髪はほとりを抱き寄せて。
俺が声をかけても反応しない。
「……っ」
無性にイラっとした。ほとりに、ではない。気安く触っている隣の野郎にだ。
ほとりには、彼が選ばないであろう上等な服を「着せられて」いる。唇にはリップグロス。手には指輪。耳にはイヤリングが揺れていた。どれも高価なものだろう。そんなことよりイヤリングでなくピアスだったなら、問答無用で殺してやったが。ほとりの身体に怪我はない。
「ほとりを返してくれ。そうすれば関節を逆に曲げるだけで許してやる」
「全然許してねーな。君が『ミチ』くん、かな?」
「……え? ああ。なんで名前を……」
赤髪はニヤリと目を細める。やけに愉しそうだが、ほとりのような爽やかさも愛らしさも何もない。底冷えするような、冷たい瞳の光。
「お前の笑顔を見ても嬉しくない。笑うな」
赤髪は目を点にした。肩にかけたコートがするっとずれる。
「急に(言葉で)ぶん殴ってくるじゃん……。やめな? 余裕のない男は嫌われるよ?」
嘲笑を浮かべ、ごつい指がほとりの柔頬を撫でる。
なんだろうか。この、脳が破壊されそうな感覚は。
「ほとりはそんなことで俺を嫌ったりしない。そんなことも知らないなら返してくれ。お前には勿体ないし吊り合わない」
一歩進むと、男が手で制止した。
「ストップ。こっちこないでそこに座って」
顎で対面のソファーを示す。
「なんで?」
「素直に聞いてくるね……。ほとりくんは俺の言葉にだけ反応するようにしてあるから。俺の言うことは聞いた方が良いよ?」
「……? だからどうした」
赤髪は首を傾げる。
「あれ? 伝わらない? 従わないと、ほとりくんの命はないよって意・味」
赤髪がグラスを持つと、ぼうっとしていたほとりがようやく動いた。両手でお酒を持ち、赤髪のグラスに注いでいる。
「ほとり!」
「……」
ぴくりとも反応しない。こんなに近くに居るのに。
奥歯を噛みしめる俺に、赤髪はにんまりと笑みを広げる。
「悔しい? でも君もすぐに、俺のお人形にしてあげるよ。俺、宇宙生物が好きでさ……。俺のコレクション、見る?」
「見ない。どうせほとりにも断られたから、俺に自慢したいんだろ」
「……うん」
赤髪は肩を落としたが、気を取り直すように笑う。
「いいから座りなって。お話ししよう?」
「お話? お前の首を折れば終わるだろ」
「分かんないかなー。俺の言葉一つで、死んじゃうよ? ほとりくん。勿体ない。こんなに可愛いのに」
ほとりの髪を掬っている。
俺は嘆息した。
「馬鹿かお前は。ほとりをなくしてお前、どうやって俺から身を守るつもりだ。生き物に言う事を聞かせるやり方を、俺が教えてやろうか?」
「……」
目を据わらせた赤髪がずずっと酒をすする。
「なんで君の方が悪役台詞吐いているのかはともかく。殺さなくとも、辱める方法もあるよ? ほとりくん。全裸で俺に奉仕させようか?」
胸元のリボンを解くと、ほとりの耳元で囁いた。
「脱いで」
「……はい」
頷いたほとりがボタンを外していく。
「! よせ」
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