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夏の一幕 ミチとルンバさん
『ミチ様。お時間よろしいでしょうか』
「ん? 何?」
単語帳に都道府県名を書いているとルンバさんがベッド下から出てくる。どうしたのか。もっと効率の良いやり方でもおススメしてくれるのか?
『不遜にも、ミチ様に銃を向けた愚か者の話ですが』
「お、おう」
全然違った。
『どうやら赤髪とは関係がないようです』
「……こっちきて」
俺たちの声で起こさないように部屋の隅へ寄る。
「もしかして。あれからも調べてたのか?」
『はい。ミチ様を呼ぶためのメッセンジャーだとしても、ミチ様に発砲する意味がありませんから』
「……言われてみれば。赤髪はほとりはともかく、俺を殺す気はちっともなかったな」
顎に指をかけて思い出す。
イカれた男だが、根っこはただの宇宙生物大好き野郎だった。次会えばほとりが止めてもあいつでサッカーしてやる予定だが。
「じゃあなんで、赤髪の場所を知ってたんだ? 俺に場所を教えたの、あのフルフェイスヘルメットだし」
『赤髪は宇宙生物大好きでしたが、もしかして真逆の感情を抱いた人間かも知れません。明確な憎悪を感知しました』
俺たちに悪意を持っている組織ってことか?
情報が足らない。
「あー、こんなことなら川に流すんじゃなかった」
『怒ってらっしゃいましたものね。ミチ様。容赦なく川に叩き落としたお姿、記録しておきました』
「お、おっす。どうも」
人間が相手なら、狙われるのが俺一人ならどうってことはないが、ほとりやついでに可愛斗になにかあると困るな。俺は頭に血が上りやすい方だ。冷静な判断と行動を取れない可能性が大。ずっと一緒に居たのがルンバさんだったから、俺は誰かを守る技術が乏しい。経験もない。まいったな。
うむ。考えていても仕方が無いな。一人で無理なら手を借りればいい。
「もしものときは、ルンバさんも手伝ってくれるか?」
『一声いただければ、探し出して建物ごと更地にしてきますが?』
「やめれる?」
やっぱ一人で頑張るかな。
『冗談ですよ』
「なってないなってない。冗談に」
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