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ロッドウルム編  駅弁タイム 

 ハガキに書かれていた住所に向かう。  可愛斗がミチに帽子とサングラス、マスクを付けていたが「お忍び中の芸能人」感が凄まじく。逆に人目を惹き付けてしまうとのことで帽子だけとなった。  ジャージにキャスケット帽。三つ編みヘアーに裸足。  色々と壊滅してそうだがイケメンパワーでなんとか形になっている。 「イケメンってずるいな」 「体格も良いし……。掘りも深いもんね」  可愛斗とイケメンへの恨みを吐きながら駅弁を楽しむ。せっかく都会に出てきたのだ。ご当地キャラのアルカナイクマとコラボした駅弁を食べてみたかった。  向かい合う形の席。窓際に俺。俺の横に可愛斗。正面に腕と足を組んでいる宇宙生物。  すれ違う人が絶対に、驚いた顔でミチを見ていく。 「なんで裸足なんだよお前」 「靴は苦手でな」 「弁当にゼリーついてたけど。ミチ、食べる?」 「ゼリー? 液体か?」 「液体じゃないよ。でもやわらかい」  液体じゃないと聞くと窓の外に目を向けた。横で可愛斗が欲しそうに眺めてくる。 「いる?」 「やりぃ!」  同じのが弁当に入っているはずなのに、拳を掲げて喜んでいる。 「羨ましいだろー。イケメン野郎。いいだろ。ほとりのゼリー」  クソガキ感満載に自慢し出す。 「……確かに羨ましい。悔しいな」 「へっへーん」  ミチが大人の対応をしている。ミチは水筒の中身をがぶ飲みしていた。俺の作ったお茶を水筒に詰めているのを見て、嬉しくなる。たったそれだけのことで。  駅で停まっていた電車がゆるやかに発進し出す。 「ふぉふぉふぉふぇっふぇふぇふぉおおんおうう?(どこの駅で降りるんだっけ?)」  駅弁を口いっぱいに頬張っている可愛斗が肘でつついてくる。 「如月(きさらぎ)駅。まだまだ先だよ。まだあと一時間くらい」 「もぐもぐモグモグ」 「うん。お弁当食べたら寝てていいよ。ついたら起こすし」 「もぐもぐもごもご」 「おう。ありがとね」  ミチは難解な問題を前にしたような顔つきになった。 「可愛斗はなんて言っているんだ? 翻訳機でも分からん」 「俺も分かんない。適当に返事してるだけ」  そう言うと可愛斗は「あがっ⁉」とした顔を向けてきたので、たまたま会話になっていたようだ。 「んだよそれー! 愛の力で通じてると思ってたのに! 俺の純情返せよ」 「ブロッコリー、食べてあげようか?」 「くぅんくぅん」  大型犬の頭を撫でつつ、ブロッコリーを口に運ぶ。塩味で美味しい。  俺の肩に甘えるようにもたれる可愛斗。ミチが拗ねたように唇を尖らせた。 「俺もほとりの隣が良かったな」 「え?」 「駄目だぞ! ここは俺の場所だ!」  がるるるっと大型犬が俺を抱き締める。お弁当と箸を持ったまま。器用な奴。 「可愛斗。次の駅で場所交換しないか?」 「しないっ! ほとりの横は俺なんだ!」  電車で騒ぐな。俺が良い案を出そう。 「じゃあ、可愛斗がミチの横に座ればいいんじゃないか?」 「「……」」  仲良く二人座っているのを想像したのか、銀髪と茶金髪はずぅんと項垂れた。  くわっと詰め寄ってくる。 「何が『じゃあ』なんだよほとりぃ!」 「お前らを仲良くさせようと思って……。良くないか?」 「良くねーよ! こんなイケてるフェイスと親しくする気はないっての!」  んべーっと、ミチに向かって舌を突き出している。こいつは本当に二十歳なのだろうか。ミチもほほ笑ましい顔をして見ている。 「では。俺はここで構わない」 「いいの?」 「ほとりの顔がよく見える」  にこっと微笑むミチ。  イケメンが迂闊に甘いセリフを吐くな。イケメンビームで可愛斗と共に灰になるところだっただろ! 「目がああああああぁ」  ほらもう! 可愛斗がバ〇スを喰らっている。

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