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ロッドウルム編 襲撃
眠っていたようだ。
ミチに起こされる俺と可愛斗。
「ふが?」
「んぅ……。なぁに、ミチ。朝ぁ……?」
「次が如月駅だとアナウンスがあった。如月に着くぞ。二人とも」
熟睡していた。電車の中ってどうしてこんなに眠くなるのか。
右肩が重いのは、可愛斗の枕になっていたからかな。
両手を上げてううんと背伸びをする。
「なんだ。子どもじゃないの」
新聞と缶コーヒーを持った乗客が足を止めた。
「は?」
反応したのは通路側に居た可愛斗だった。俺はその乗客の存在にすら気づいていない。
「こんにちは。坊やたち。地球を這いまわる外虫と仲良くするのなら、あなた方も同罪とみなすわ」
可愛斗が目を見開く。新聞紙に隠された隙間から覗くのは鉄の筒。
日本ではまず見ない、銃口である。
「え――」
乗客は迷わず引き金に指をかけた。
が、指は動かない。
「っ?」
「平和の国の住人に、二度もそんなものを向けるな」
ミチの瞳が白目まで真っ青だ。
念動力を使っている。俺はようやく事態を飲み込めた、かもしれない。
銃をこちらに向けているのは女性だった。
艶のある黒髪をなびかせ、異国の血が混じっていそうなブラウンの瞳。袖なしのフリルブラウスに、スリットが眩しいタイトスカート。
咄嗟に可愛斗を庇うように抱きしめた。
一瞬、ミチの能力に驚いたようだったが、真っ赤な唇は妖しい笑みを広げる。
「なるほどね。こういう能力、か。えっちなことをするのに最適じゃない」
ミチが腰を上げる。
「……あの紳士帽子の仲間か?」
「紳士帽? ああ。あれはただの雇われの殺し屋みたいなものよ。あなたの力を見たくてね。おかげでデータは取れたわ」
ハッとしたミチが顔を上げる。電車の天井に、黒い、蜘蛛のような生き物が貼りついていた。人間よりもはるかに大きく、足は四本。頭部は黒いマネキンに酷似しており、人間も見えなくもない。
それはミチ目掛けて、真っすぐに落ちてくる。
「チッ」
ミチは通路側に避けたが、黒い蜘蛛はキャスケットと電車の椅子を踏み潰した。ドドンと衝撃が電車を揺らし、線路から車輪が一ミリほど浮く。あり得ない重さである。
黒い人モドキは自重で潰れる様子もなく、二本の足で立ち上がった。人間のように。キッとミチに顔を向ける。
(くそっ! ほとりたちから離された!)
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