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ロッドウルム編 リスさんありがとう
トイレ行ってくると走り去ってから時間が過ぎている。猛烈に腹が痛いのだろうか。
ミチも周囲を見回している。
「そう言えばそうだな」
「降ろして?」
「ちょっと見てくる」
廊下に出ると、ちょうど可愛斗が歩いてくるところだった。……えぐえぐと泣きながら。
思わず駆け寄る。
「どうした⁉」
「卿次に何かされたのか⁉ こいつか? こいつのせいか? 髪を赤色にわざわざ染めてる奴のせいか」
「無実です! それと地毛だわ!」
「それはすまん」
鼻水まで垂らした可愛斗が顔を上げた。下唇を噛み、ぶるぶると震えている。
「ま……まよっだ」
「「……」」
「どいれから出たら……部屋の場所、っ、わがんなぐなっで……。さまよってたら、リスが……」
床に目を落とせば足元にリスさんがいた。迷っている可愛斗に気づき、先導してくれていたようだ。そうだよね。この家、我が家の十倍くらいの面積あるものね。しかもそれが三つもあるとか。
「泣き止んでよ。何故か俺に疑いの目が向いたじゃん。はい」
卿次さんがハンカチを差し出す。
可愛斗はそれで思いっきり鼻をかんだ。
卿次さんが笑顔のまま青ざめていた。すいません。あとで洗濯しておきますので。
「ほどりいいぃ」
「よーしよしよしよし」
迷子が抱きついてくる。ミチと一緒に頭をぽんぽんしておく。分かるよ。迷子になるってすんごい不安になるよね。迷子になって不安になるのって俺だけかと思っていたからちょっと安心した。
ミチに手伝ってもらって、しがみついたままの可愛斗を部屋まで運ぶ。飯を見せたら少しは元気になるだろ。
「うわあああっ。うまそー。早く食べようぜ!」
どひゅん! とテーブルに走って行く。
ほっとしたよ。
朝食。俺の隣に誰が座るかでミチと可愛斗は揉めたが、ジャンケンで決着がついた。
俺の横にミチが座り、正面に卿次さんとぶっすうとした可愛斗。エトナさんは日光浴をしており、リスさんは床掃除中のルンバさんに乗って丸まっている。卿次さんのシャツが不自然に膨らんでいるので、その辺りに蛇さんが巻き付いているんだろう。
いただきますして食べ始める。
「……で、マリアさんはどうしたの?」
「ん? ああ。首輪をつけて解放した。閉じ込めておく牢屋も無いしな」
「何の話?」
ついてこれてない可愛斗にざっと流れを話す。
「首輪って?」
「俺たちに近づいたり危害を加えようとしたりすれば毒針が出る首輪。その装着が見逃す条件だった。他の連中はもう立てないほどに……されていたな。兵器として使われていた宇宙生物たちと俺に」
「え? 俺たちが寝てる間に片付けたのかよ」
可愛斗に頷いている。
「殺した方が良かったか?」
ミチの声に、食卓は凍り付いた。
その反応にミチは満足げに頷く。
「サッカーボールの言うとおりにして良かったようだ」
「感謝してるのなら名前で呼んでちょうだい?」
「……んだよ。ビビらせんなよ。なんか焦げてねーかこの卵。さてはお前が焼いたんだろ! まだまだだな」
可愛斗が箸でミチを指している。
「俺だよ」
「なーんだ。ほとりかよ。余所見でもしてたのか? こんなんじゃ嫁の貰い手見つからないぞ~。まあいいけどな。俺がもらってやるしよ!」
卿次さんが可愛斗とミチを見比べている。
「なんでこの子の胸ぐらは掴まないの?」
「食後にやる。ついでに関節技しておく」
「え? え?」
俺は静かに味噌汁を味わった。
いやまさかミチが本当にやるとは。最近仲良くなってるみたいだったので油断していた。食器洗っていると外から悲鳴が聞こえた。
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