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第13話
◇
明日は大晦日。
年末年始、俺は10日間の連休だが、隼人はいつもと変わらないどころか大晦日が当番の日だそうで、消防士は繁忙期とのこと。
今日は2人で過ごせるが、大晦日は1人ということになりそうだ。例年は仕事が終わった瞬間に海外に逃亡していたが、今年は出来る限り隼人と過ごしたい。
あとは観たかった映画と読書を存分に楽しもうかな。
夜勤明けで帰ってきた隼人が風呂から出てきた気配を感じて風呂場に向かう。
洗濯機に洗濯物を突っ込みながら鼻歌を歌っている。…その横にしゃがみ、頬杖をついて眺めてみる。
「〜♪…ん?どした?」
「…幸せだなー、とおもいました…?」
「疑問系かよ!笑」
「…あと、隼人くんかっこいいなーって。思いながら見てました」
「よし、その意気でもうひとこえください」
「隼人が好きだなって。」
にこり、としてみる。
「……涼ってさ……本当にもう…」
隼人がうつむく。
「どした。」
「…涼さん、今から一緒に昼寝でもいかがですか?」
「…ごめんなさい、隼人さん、私には洗濯物を干すという任務があるのです…!」
「え、やっといてくれるの…?」
「当たり前じゃん。身体が資本なんだから、ほら、とっとと寝てこい!」
隼人は「ありがとうー!」と言いながら俺に抱きつき、「早くベッドきてよ!」と言って寝室に向かった。
◇
洗濯物を干したあと、ほかの家事をしていると結局1時間くらい経っただろうか。
隼人がベッドで寝ているところに本を持って向かう。横になって本を開くと、後ろから抱きしめられた。
「ごめん。起こした?」
「ん?読んでて」
半分寝ぼけているのか、まだ眠そうだ。
隼人の腕が腰のあたりに回る。
…初めて2人でここでした時以来だな。
ドキドキしないなんて嘘になる。
本を数行読み進めてみるが、まったく頭に入らない。
「んー集中できないな。」
「…本より俺がいい?」
本にしおりを挟みサイドボードに置いて振り返ると隼人がキスをしてくる。
真昼間の明るい中だというのに、このまま何もかも隼人に奪われたい、そんな気分になる。
舌が絡むのが気持ちがいい。
「んっ…はやと」
「っ…なに」
唇を離す。
「…ねぇ、いつかさ」
なぜだろう、
触り合いだけじゃなく
隼人と最後までしてみたい、
が、なかなか言えない。
「うん…?」
「なんでもない。すき。」
◇大晦日
隼人side
人の動きが普段と違い、皆が慣れないことをする時期は救急も火事も事故も普段より出場が多くなる。できるだけ休みたい人が休めるよう、消防士になって以来大晦日は積極的に勤務をするようにしている。
平穏に新年を迎えられるようにと願うが、毎年ほぼ必ず初詣の参拝客の救急要請がある。
…今年も例に漏れず忙しいだろうな。
休憩室に入ると翼がいた。
横に座る。
「おつかれさん」
「今年も隼人さんと年越しですね」
「去年翼と雑煮作ったのが1週間前くらいに感じるわ」
「やめてくださいよ、ジジイみたいな発言」
「さすがにもうジジイみたいなもんだろー」
「…いい1年になりました?」
「そうだな、翼は?」
「終わりよければ全てよしかな。」
◇
涼side
たまには父と母に電話してみようか。
除夜の鐘と、サイレンが鳴り響く。
今年も1年が終わった。
13話 おわり。
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