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第6話 偽物と本物。(3)

「いい加減、俺の上から退け」 気が付いたら、二回目の砂時計の砂も落ちきっていた。 仕方なく、俺はセシルの身体を解放した。 するとセシルは素早く乱れた服装を整えた。 「俺を女の代わりに出来るのも今のうちだぞ。俺はお前より年上だからな」 「何度も言いますけど、尻でイクことを覚えた男って、女に反応できるんですか」 「ったく、本当にお前は本当に悪趣味だな。……体力は仕事のために温存しておけ、レイズナー」 俺の手の届くところに砂時計はいつも置かないセシルは、今日俺がこうすることを期待していたような気がしてならなかった。 あんたもあの港に何か思いがあるんですか。 俺があんたのシャドウをやっている、そのことに負い目を感じないでください。 「俺はあんたのシャドウになれて幸せです。憧れだったキャプテン・セシルの公認のシャドウなんて、そうなれるもんじゃないです」 最愛の人と同じようにつけた右目の傷跡に触れて想いを確かめた。 あんたが俺を必要と思うよりも、俺はあんたを必要としている。 きっとそれは他の誰にも負けない想いだと、自覚がある。 あんたが俺を縛ってるんじゃない、俺があんたを縛ってるんだよ、セシル。 俺のその想いにあんたはきっと気付いてないだろう。 俺はあんたの偽者だけど、あんたへの俺の想いは本物だ。

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