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第7話 海に投げ入れたブランデー瓶。(1)

「もし帰ることがあったら、……この子を国につれて行きたい」 酒場で歌姫シンディを一目見たときに、セシルは呟いた。 その言葉を発した際、そばにいたのはシルビーとレイズナーとそして幹部の数名。 「……それ冗談よね?」 シルビーはビールが入ってるコップを落としそうになりながら、呆然としている。 「キャプテンがロリコンだったとはな」 「十は離れてるっスよね?」 この日のセシルは何故か酒のピッチが早いと思っていたレイズナーは、セシルが飲んでいるブランデーをボトルごと奪った。 「今日は飲み過ぎです。あんたはもう水でも飲んでてください」 「おい!!俺に指図するなっ」 「これは俺が預かります」 レイズナーはグラスのブランデーを一気に飲んだ。 今日のセシルはどこか変だった。 セシルからは昔幼馴染みの妹との関係を許してもらうことが出来ず、大喧嘩の末決闘し負けたことはレイズナーは聞いていたが。 まさかその幼馴染みの妹がシンディが似ていたのだろうか。 「……ったく。妬かなくてもお前も可愛いぞ、レイズナー」 「あんたは大海賊のキャプテン・セシルだということ、少しは自覚してください」 「そ、そうよ。あんたが死んだりしたら、困るのはアタシ達なんだから」 シルビーはいつもより感情的になって、レイズナーに賛成した。 結局のところ、シルビーもセシルが好きなのだ。 それを知っているレイズナーは、セシルの隙をついて唇を掠めるように奪った。 すると条件反射のように、セシルはレイズナーを殴った。 「てめぇ……。何しやがるっ、バカヤロー!!」 レイズナーの身体は見事に吹き飛んだと同時に回りが大騒ぎになる。 端から見たら、レイズナーがセシルなのだから無理もない。 大海賊のキャプテンが殴られたのだ、そこにいる者みんなが驚いていた。 そして今レイズナーがシャドウ(影武者)だと知られるのはまずい。 「そう、……それでいい。男は大切なものを見付けると、強くなり、そして弱点にもなる。海賊が本気の恋などするな」 レイズナーはなんでもないように、立ち上がると酒場を去っていった。

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