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第11話 苦悩が似合わない男。(1)
ブラックシャーク号のキャプテン・セシルは悩みを抱えていた。
近くに存在しているからこそ苦悩する、一旦距離を置き原因を心から追い出すため少し遠出をすることにした。
ようするに現実逃避だ。
というとこで久々に単独でブラックシャーク号から降り小舟を漕いだ。
特にどこかへ行こうとかそういうことでもなく、先日見付けた小さな無人島の砂浜で気分転換をしようと思っていた。
小島に到着し砂浜に降り立ち、そして少し歩いた。
ただ気楽に歩いているはずなのに、つい苦悩し考えてしまう。
本人の自覚もなく出た独り言で、まさかレイズナーが嫉妬をするなんて思ってもみなかったセシルだった。
彼はその事について悩んでいた。
きっとセシルにレイズナー以外とは別に裏表なく付き合える友がいたなら、きっと相談していただろう。
そう思うくらいの悩みに大きくなっていた。
自分に好意を抱いているレイズナーのせいで悩んでいたため、心を唯一許しているのに直接言い出せない。
セシルは猪突猛進だが、レイズナーはいい意味でも悪い意味でも真っ直ぐで一途なところがある。
そこがとても魅力的な自分の影武者だと思いもするが、まさか女の話であんなに剥き出しで怒るなんて。
そんなに好意を持たれているとも思いもしなかったし、驚きもしたが。
「お前、……程ってもんがあんだろ」
などと大きめの独り言を言っても返事があるわけでもなく。
少し歩いていると人影のようなものが見えてくる。
セシルは夜目が効く、その人影はまだこちらに気付いていないようだ。
よく左目を凝らしてみると、絶対に会ってはいけないだろうという人物がいた。
その影は海軍提督ウィリアムズだった。
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