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第14話 欲求不満。(1)

大海賊のキャプテン・セシルは欲求不満だった。 無理もない、ブラックシャーク号の中の先端の幹部室か自室、そして操舵室にしか彼の居場所はないのだから。 大海賊の主として君臨するような存在のセシルが命を狙われることも少なくはない。 そしてそれは仲間でさえ狙う輩なども稀ではなかった。 その対処はシャドウキャプテン(影武者)レイズナーと幹部で内密に処理されていた。 表に出るなど許されないセシル本人はは大人しくするしかないのだ。 危ないことはシャドウ(レイズナー)の役目、そういうことで派手に動けない今現在のセシルだった。 「有名になりすぎるのも面倒だな」 セシルは大海賊のキャプテンになるのは夢のようなこと思っていたが、そして登り詰めようとしたわけでもないのに何故か叶ってしまった。 「ただ見た目が少し派手なだけで、そう大して凄味のない男だよなぁ?」 自分を鏡で見た。 右目にかかる大きな傷跡に触れて、溜息をついた。 この傷が、この目が負傷してなかったら、セシルはここまで有名になることはなかったのだろう。 そんなときにシルビーに声をかけられた。 「セシル、ちょっといいかしら?」 鏡を見ているときのセシルは気分が優れないことが多い。 丁度そのときに出会したシルビーは身を固くした。 「別にいいぜ?」 「……やっぱりやめておくわ。セシルは部屋に戻っててちょうだい」 そうシルビーは言い残すと幹部室を後にした。 気を使われてることが嫌な気分だったセシルは、右腕の傷跡を左手でえぐった。 なにもかもが面白くなかったセシルは甲板に立ち寄ってから部屋に戻った。

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