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第16話 欲求不満。(3)
セシル自身、大海賊のキャプテンとしての定位置は似合わないし、そして叶わない夢だと思っていた。
それなのに思いがけずあっさりと手に入ってしまった。
その憧れていた位置に自分は居るのに、それでも何か足りないのだ。
セシルの欲求不満は永遠に満たされないのだろう。
束の間の欲求に溺れる時間だけ、その不満は満たされる。
セシルは眠るレイズナーの隣で呟いた。
「女役は名前とワルツだけでよかったはずなのに、まさか尻を掘られて悦がる身体になるとはな」
「何か言いました、セシル」
「別に。……男は面倒じゃなくていいって言っただけだ。避妊しなくても抱き合えるしな?」
「そうですね」
本当は聞こえていたが、レイズナーは聞こえていないフリをした。
口付けを交わし、また二人は互いの身体を求める。
キャプテン・セシルは常に欲求不満だった。
まるで満たされることのない海で溺れているような、そんな気分を感じていた。
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